岩波文庫<br> 西欧人の眼に 〈下〉

岩波文庫
西欧人の眼に 〈下〉

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  • サイズ 文庫判/ページ数 339p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003224854
  • NDC分類 933
  • Cコード C0197

出版社内容情報

ひと癖ありげな革命家たちに,英雄的行為の実行者として迎えられ,猜疑と不安に襲われるラズーモフ.「おれには,ハルディンを振り払うことなぞできないんだ」煩悶のすえ,彼はある決意を胸に下宿からとび出した….

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

307
かつてジュネーヴが、亡命ロシア人たちの重要な拠点であり、互いの情報交換の場であったこと、そしてそこがまさにロシアと西欧との結節点であったことは知らなかった。私のイメージするスラブ世界と西欧との交点はウィーンだった。さて、小説の結末はなんとも陰惨で暗く、またやるせない。そして、ハルディンの孤独も深い。また、ニキータの暴力と俗物性は、そのままロシアそのものを体現するかのようだ。ドストエフスキーの絶望と崇高、プーシキンの激情、そしてロシア文学ではないものの、ここにもう一つのロシアが描かれた。2017/12/09

ケイ

110
なるほど。主人公以外の視点がややこしいと思ったら、語り手は西欧人であって、ロシア人とは視点が違うという意味だったのだ。日本人には理解しがたい、西欧人とロシア人の違いはどこなのかと、最近本を読んで思うところが多く、ロシアの18~20世紀の歴史を勉強する気になった。コンラッドは西欧とロシアの各々にとっての普遍性となるものの違うを示しために、内容はわかりやすいものとなっているから、さっと読むとこの作品の重さを見落としてしまいそうになる。それでも最後にはハッとするけれども。再読必須。2016/02/11

藤月はな(灯れ松明の火)

86
ラズーモフはごく普通の青年だ。にこやかで優しく、聞き上手で、でも内心では蔑んだり、批判的な目で冷ややかに見ているような。そんな彼の元へは望みもしないのに自分の話をしに来る人たちが集まってくる。革命への熱意やそれに付随する名誉欲などの欲望、今の体制への不満などを言いにくるロシア人達が。彼らにとってラズーモフは同じ人間じゃなくて本音を掘り投げる為に都合のいいゲロ袋でしかなかったのだろう。最後のラズーモフにとっては余りにも痛ましく、ロシア人にとっては得手勝手な顛末は『密偵』を反転させたかのような皮肉さがある。2018/10/23

セウテス

80
下巻に入り、どうやら西欧人的な目線を描いているらしい。西欧人とロシア人は全く違うというのは、どうやら西欧側の感覚なのだろう。違いは解るのだが、私たち日本人と中国人は同じに見えると言われて、とんでもない事だと反論するのに近いのかも知れない。結局ラズーモフという人物は、特別な能力や運命を背負っている訳ではなく、ただ他人から好意的に想われてしまうだけの人だった。革命とテロの狭間に、巻き込まれた彼の精神の崩壊には哀れみを感じる。しかし、こうした問題は最初に一人で勝手に判断した事から、生み出される気がしてならない。2019/02/17

NAO

71
かつてスパイたち暗躍の舞台だった国際都市ジュネーブを舞台にしたコンラッドのスパイ小説。登場人物たちはロシアの革命家として描かれているが、コンラッドの父はウクライナに住むポーランド人で、ポーランド独立のためにかなり行動しており、挫折の末に亡くなった。コンラッドの父はかなり熱心な革命家だったようだが、その運動のさなかに、この作品に出る来るような「革命家」たちに出会うことも多かったのではないだろうか。コンラッドは、こういった「革命家」たちに対するかなりの屈託があったのかもしれない。2018/01/28

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