岩波文庫
女の平和 (改版)

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  • サイズ 文庫判/ページ数 154p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003210871
  • NDC分類 991
  • Cコード C0198

出版社内容情報

男が戦争を終らせるだけの能力がないのに愛想をつかした女主人公リューシストラテーは,アテーナイの女たちをアクロポリスに立てこもらせ,市民が和議を結ぶまでは男と床を共にしないと誓わせる.女たちの男に対するセックス・ストライキは功を奏して,ついに和平が実現する.滑稽な中に作者の真剣な平和への熱望が溢れている.

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

390
世界史の知識としてはともかく、ギリシャ喜劇は初読。本編は紀元前411年の初演というから、かれこれ2500年も前である。そのことにまず驚くが、どうやらこの頃ギリシャ世界では既に悲劇と喜劇とが並立し、方法意識も画然と区別されていたようなのだ。すなわち喜劇においては徹頭徹尾、人間の世俗的な空間の中で劇が決裁されてゆく。当然、悲劇の崇高に対して、通俗的なものになる。その代わり、生々しく、いたって人間的な言動がそこには立ち現れる。そして、時には卑猥でもあるが、それは隠微ではなく、あくまでも開放的で明るいのである。2021/11/15

藤月はな(灯れ松明の火)

94
最近、ビズアレーが挿画を描いていたというのを知って恐る恐る、読む。内容は高校の熊さん似の世界史の先生の言及で知っていたけど、読んでみると下ネタ多めだけど、意外と奥深い。女の立場が奴隷と変わらない位に低かったギリシャで「もう、戦争は嫌!」と女たちが団結し、セックス・ストライキを敢行。確かに実際、男がバカをやれるように生活を支えているのは女だもんね。そして深見真作品での「戦争時に男を団結させるには略奪が一番だ」という事への女の(ある意味、現実的にはできにくいが)抵抗を示している。これはフェミニズムの元祖だ!2017/10/13

syaori

66
アテナイ凋落を決定づけたペロポネソス戦争後期に書かれた喜劇。戦争終結を求め女性達が性的ボイコットを行い、最後は敵と味方、男と女が和合する艶笑劇なのですが、当時の情勢を考えると訳者の「すぐれた喜劇というものの悲しさ」という言葉を思わずにはいられません。「こんな馬鹿なことを」という劇中の言葉は、そのまま戦争とデマゴーグに明け暮れるアテナイ市民に向けた言葉でもあるのだと思います。作者はそれを性の屈託のない笑いに包んで差し出していて、それを思うと平和を求めるこの劇の祝祭的な雰囲気がまた違った意味で胸を打ちました。2022/01/24

さきん

30
著者はペロポネソス戦争の真っ只中で描く。アテナイ側とスパルタ側の果てしない戦いが続き、厭戦気分が蔓延している。ギリシャ世界全体も衰退していっている。女がもっと社会の全面出てくればという戦争なんて起きないじゃないかというifを描いている。戦争を止める方法が夫や子供に対するサポタージュと全ギリシャ女性の連帯である。翻訳は昭和中期の若者言葉、女性言葉で書き綴られており、昭和感満載。元祖フェニミズム。男側も連帯を崩すなど工夫するとは思う。2021/11/29

かごむし

28
再読。注釈がうるさいかなと最初思ったけど、劇の中での微妙なエロティックな部分や、皮肉などは注釈がないとわからないからやむをえないのかなと。現代風に翻案したらもっと読みやすくなるだろうなと思うけれど、上映当時、アテネはペロポネソス戦争中の暗い時代であり、その中での平和を希求する想い、平和の担い手は、か弱いものとされる女性たちなんだとの叫びは、この時代のこの状況でしか生まれえなかったものなのだろう。とはいえ、この本自体は、エッチでばかばかしくて楽しく読める。あのシーンは、うぐぐぐと共感してしまった(男性です)2016/02/24

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