出版社内容情報
「辰巳巷談」は明治31年の作.鏡花が深く愛した深川の地を舞台に,洲崎の女を描いたものであるが,遊里そのものを描かず,側面から妓女の生活を描破したところに凡筆でない生彩をみることができる.「通夜物語」は同年の作で,東京の山の手の屋敷町になおはびこる旧代の因襲的思想に対する,作者の憎悪が溢れている.解説=奥野信太郎
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
双海(ふたみ)
12
黙読よりも音読のほうが楽しめる本。冒頭付近の「水面に墨を流したやうな舟」という表現が好きです。2014/10/30
冬見
10
【辰巳巷談】行末は哀しく、これはたしかに悲劇であるが、女たちがかっこいい。冒頭に僅か登場するのみの名ばかりの想い人と、死を与えるものの翻弄される道化に過ぎない男。女の物語だなあと思う。 【通夜物語】途中で集中力が切れたのでまた後日読み直したい。2020/03/25
作楽
9
テンポのいい会話で読みやすい作品ですが、旧字体の難しい漢字に泣かされました・・・。遊女ものなんですが、鏡花さんが書くと可愛くて強い女の人になるんだなと思いましたw2016/08/04
バニラ
3
美しい。映画を観ているように錯覚してしまう。2019/01/16
すみれ
2
丁山の真紅の血墨のしたたりは、人は誇りと愛で生きるのだと究極の形で知らしめる。襖の血のあとは暗中に光ありと。雄々しく猛々しい龍の如くどこまでも広がる雲の如く凄烈清浄な水の如くに表された丁山の光には、世間も読者も私もこんな誇りも愛も知らないとは決して言えまい。因襲的価値観で人を悪し様に言ってのける有様に、地団駄踏みたくなるような腹立ちが湧き、語りのテッテケテッテケのリズムに増幅される。松の徳川様なぞ知らない、遊女の丁山が一番偉いとの言い切りに拍手するも、ドラマティックな結末に心は静かに血の色に波打つのだ。2018/11/11