出版社内容情報
日清戦争後の資本主義の発展とともに急速に寄生的ブルジョアジーが成長した日本社会.そこに生きる政治家,官僚,実業家,宗教家,教育家から新聞記者や出版屋にいたるまでの各階層の腐敗堕落の種々相を諷刺的にスケッチした中・短篇集.さながら,文芸批評の先駆者魯庵の手になる明治社会の一大滑稽絵巻といえよう.解説=猪野謙二,内田巌
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
猫丸
9
内田魯庵、慶応四年生まれという。まさに近世のどん詰まり、漱石のひとつ年下ということになる。20世紀初頭に生きた、おそらく著者の周りの実在人物に材をとっているのでは。学校は出たが高等官試験に合格するほどでもない。世を睥睨するが如く大言壮語、貴顕の俗物根性を唾棄すべきものとしながらも、何がしかの手蔓でもあらんやと右顧左眄。意に沿わぬ中学教師として糊口をしのぎつつ、臥薪嘗胆いずれ世に出る秋を待つうち当初の志はいづくにや、出世した旧友に新橋芸者を奢られて悦に入る。やがてこの階級が中流となる。2021/10/28
にゃん吉
1
砂糖増税や教科書の疑獄などの社会問題や、明治30年代頃の役人、書生、教師、運動家等の、新時代の進行とともに生まれた種々の階層、地位にある人々が風刺されています。「猟官」、「閨閥」の章で描かれる立身出世のルートや、「貧書生」の壮士の話、「ハイカラ紳士」のハイカラ紳士と天保生まれの伯父のやり取りなどが、特に興味深いものがありました。小説という観点からは、名作というわけではないでしょうが、非常に面白い作品です。
丰
0
Y-202002/05/28