出版社内容情報
旧制一高に入学した翌年,川端康成は,初めて伊豆に旅をして,天城峠を越えて下田へ向かう旅芸人の一行と道連れになる.ほのかな旅情と青春の哀歓を描いた傑作「伊豆の踊子」など,作者20代の青春の叙情6篇.
内容説明
旧制第一高等学校に入学した川端康成(1899‐1972)は、1918(大正7)年秋、初めて伊豆に旅をして、天城峠を越えて下田に向かう旅芸人の一行と道連れになった。ほのかな旅情と青春の哀歓を描いた青春文学の傑作「伊豆の踊子」のほか、祖父の死を記録した「十六歳の日記」など、若き川端の感受性がきらめく青春の叙情六篇。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ろくせい@やまもとかねよし
96
「伊豆の踊子」は、伊豆半島の修善寺から下田まで一人旅をしていた学生が主人公。出会った旅芸人衆の一人に恋をする。人間の素直さに心を打った。「十六歳の日記」は川端さん自身の日記なのか。祖父の死の直前で感じたことが印象的。2017/05/16
藤月はな(灯れ松明の火)
87
「十六歳の日記」は肉親の介護をした経験がある人なら、語り手が感じた、ままならなさへの疎ましさや苛立ちにほろ苦さと共に思い出すだろう。「招魂祭一景」は『泳ぐひと』同様に若さの先に行き着くものへの恐れを掻き立てられる作品である。嘲笑っていた者の今が、自分の未来となるかもしれない。「温泉宿」も遣る瀬無い。女性だけが寄り添って生計を立てていける。この時代にそれができればどれだけ、宜しかったのだろう。当てにならない男の愛の言葉に縋り、バラバラになっていく女たち。特に苦労してきたお雪さんの末路には絶句せざるを得ない。2019/06/05
マエダ
85
”昨夜のままの化粧が私を一層感情的にした。眦の紅が怒っているかのような顔に幼い凛々しさを与えていた。”全体を通して歯痒く初々しい。2017/08/10
佐島楓
76
高校生時分の私は何を読んでいたのだろうと思うくらい、上っ面の理解だったことに気づいた。『伊豆の踊子』『温泉宿』共に貧しい女性の悲哀ではないか。その中で女性が輝く瞬間を切り取っているからこそ、堕ちていく闇がいっそう引き立つのである。川端のこの視点に、私は冷酷と恐怖に似たものを感じた。この作品集の中で比較的受け入れやすいものは、『青い海 黒い海』だろうか。観念の恋愛。2019/02/03
たつや
54
新年に気持ちよく読めました。川端康成クラスは安心して接待で使える老舗の料亭という、風情がありますが、初読の「温泉宿」が印象に残りました。当時の娘たちの描写が素晴らしくも儚い。2017/01/05