出版社内容情報
日本伝来の生活様式や風俗の独自性を説き,そのよろこばしき効用を礼讃した「陰翳礼讃」は,日本の伝統美の本質をついた卓抜な文明批評である.この「陰翳礼讃」をはじめ,「恋愛及び色情」「懶惰の説」など文豪谷崎潤一郎の代表的随筆十一篇を精選した本書は,数々の名作を生んだ谷崎文学の秘密を十全に説き明かしてくれる随筆集.
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
U
29
谷崎潤一郎と同じ誕生日なので、今月よもうと思い立った作品。「陰翳礼讃」含む十一話からなる随筆集です。文学作品を読破していないので、安易に比較して述べることはできないけれど、随筆はよみやすいと感じました。「陰翳礼讃」…わたしも羊羹を漆器にのせ、くらがりで食し、彼の言う「室内の暗黒が一箇の甘い塊になって舌の先で融けるのを感じ」てみようと思いました。やはり、試してみないとね。「文壇昔ばなし」…鏡花・里見・芥川と三人で鳥鍋を食べた話が、何気ないひとコマという印象で好感。(コメントへつづく)2015/07/16
双海(ふたみ)
28
もらった本です。「懶惰の説」、「恋愛及び色情」だけ再読。崇高なる肉体:「日本においては、18,9からせいぜい24,5歳までの処女の間にこそ、稀に頭の下るような美しい人を見かけるけれども、それも多くは結婚と同時に幻のように消えてしまう。」2015/05/15
ジュンコ
11
谷崎大好き。彼の視点で世の中を見てみたい。2018/08/23
月
10
暗がりの中に美を求める傾向が、東洋人にのみ強いのは何故だろうか。我々の空想には常に漆黒の闇がある。案ずるに我々東洋人は己の置かれた境遇の中に満足を求め、光線が乏しいなら乏しいなりに、却ってその闇に沈潜し、その中に自ずからなる美を発見する。西洋の寺院のゴシック建築は、屋根が高く高く尖って、その先に天に冲せんとする美観が存する。これに反して我々の国の伽藍では、建物の上にまず大きな甍を伏せて、その庇が作り出す深い廣い蔭の中に全体を取り組んでしまう。この国の美は陰翳の濃淡によって生まれているとも云える。 2015/09/13
還暦院erk
9
図書館本。「陰翳礼讃」は大昔、教科書で抜粋を読んでえらく心を動かされたっけ。今回もこれだけは2度読みした。p219柿の葉鮨の作り方までノートしちゃったよ♡何かオトコの料理って感じで豪快で真似っこしたくなるレシピ。p222~「いわゆる痴呆の芸術について」では、義太夫の非現実的な残酷展開を批判してるが、戦前の日本軍閥の横暴への恨みが底に流れているような印象。特にp246には共感しきり(これ戦中に発表したら谷崎さんも拷問されたかもなぁブルブル)。全11編の随筆は闊達自在な文体も素敵!一度は読みたい古典。2019/10/22