出版社内容情報
「千鳥」「山彦」等の清純素朴な作風に出発した三重吉(1882‐1936)が,著しい飛躍を示して純一独自な境界を開拓した長篇小説で,神経衰弱の一青年を主人公として,いわゆる現実暴露の悲哀,人生と社会とに対する懐疑,偶像破壊の思想などを自由な筆致と鮮麗な色感とをもって描き,世紀末的の頽廃した精神を表現して深刻をきわめている三重吉の代表作.解説=安倍能成
感想・レビュー
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ぶり
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読んだ後、しばらくこのガジガジに漬かってしまった。
@第2版
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漱石門下生(木曜会)の鈴木三重吉による唯一の長編小説。1910年の作。神経衰弱に陥った帝大生が学校を休学して実家に帰り休養するうちに、従姉であり嘗ての密かな恋人でもある万千子と再会し、青臭い「恋煩い」を再燃させくさくさする日々を送るが、ある日売女を買ったことが災いして梅毒にかかり、近くの小島へその養生をしに行っている間、もともと実家で病臥していた父が亡くなったという知らせを聞いて舞い戻り、葬儀等の業務を片付る序に実家を売り払うことを決め、万千子(実家に手伝いに来ていた)との関係も清算することを決意する話。2020/03/20