出版社内容情報
アンデルセンが憧れの国イタリアを舞台にくりひろげた愛の物語『即興詩人』は,鴎外の格調高い文章によって紹介されて以来,広く人々の心を捉えつづけてきた.翻訳文学の傑作であり,明治文学史上記念すべき作品である.荘重華麗な訳文を音読によって味わえるよう難読語には徹底して振り仮名をほどこした. (校訂 川口 朗)
内容説明
数奇な運命をたどるローマっ子アントニオと薄幸の歌姫アヌンチヤタ。アンデルセン憧れの国イタリアで繰り広げられる恋の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
23
現代人にとっては読みづらい文体は否めない。悔い恨める罪人の拳もて我額を撃ちつつ、地獄の底深く沈み行くあり(173頁)。車夫は顧みて、一たび市民の半を山のあなたに徒(うつ)し、その跡へは餘所(よそ)より移住せしめしことあり、されどそれさへ 雑草の叢(くさむら)に穀物の種を蒔きしに似て、何の利益(りやく)(もあらで止みぬ、兎角は貧の上の事にて、貧人の根絶やし 出来ねば、無駄なるべしと、諭し顔に物語ぬ(226頁)。長いが気になった箇所。 2015/04/18
モリータ
8
◆アンデルセン(1805-1875)作、1835年発表。主人公はローマ生まれ、運命のいたずらにより各地を遍歴するが、これは著者がイタリアを旅行した経験が下敷きになっている。◆鷗外は1892~1901年にドイツ語訳から重訳し『しがらみ草紙』などに発表、初刊は1902年。岩波文庫版は1928年初版、1969年改版(縮刷版を底本とし校訂された1954年の岩波版鷗外全集の本文による)。◆当時から現代まで、ロマンティックな物語と雅な文語訳に惹かれ、本書を携えてイタリア詣をする人も多いと。森まゆみ著も読んでみたい。2022/02/21
dolce-vita
2
昔挫折したので安野さんの口語訳と併読中。日本語なのに訳が必要なのは情けないけど。鴎外の格調高い文章を味わいつつ、時々音読してみる。美しくて気持ちいい。きみが姿を仰ぎみて、君がみ聲を聞くときは、おほそら高くあま翔り、わたつみふかくかづきいり、かぎりある身のかぎりなき、うき世にあそぶここちして、うた人なりしいにしへのダヌテがふみをかながらに、おとにうつしてこよひこそ、聞くとは思へ、うため(歌女)の君に。気持ちわかるぅ。システィーナ礼拝堂でミケランジェロを眺めながらアレグリのミゼレーレを聴く。場景にもうっとり。2016/12/24
空飛び猫
1
太陽の国イタリア。 数奇な運命をたどる少年。2012/07/31
dolce-vita
0
一度めは内容をなぞることで精一杯だったので、今度は美しい文体を味わう。2017/03/05