出版社内容情報
たまたま帰省中の一茶(一七六三―一八二七)は,父を急病で失い初七日を迎えることとなった.その三十余日間を,日記形式で綴った『父の終焉日記』.日々衰弱してゆく父の姿と遺産問題に端を発した継母・義弟との確執がなまなましく描かれる.他に,五十六歳でもうけた娘さとの誕生と死を主題にまとめた『おらが春』と『我春集』を収録.
内容説明
たまたま帰省中の一茶(1763‐1827)は、父を急病で失い初七日を迎えることとなった。その三十余日間を、日記形式で綴った『父の終焉日記』。日々衰弱してゆく父の姿と遺産問題を端に発した継母・義弟との確執がなまなましく描かれている。他に、56歳でもうけた娘さとの誕生と死を主題にまとめた『おらが春』と、『我春集』を収める。
目次
父の終焉日記(日記本文;日記別記;日本書入)
おらが春
我春集
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
103
素晴らしい本だった。今年のベストの一つに選びたい一冊。「父の終焉日記」は題の通り、小林一茶が父の死に立ち会った時の記録。継母や義弟との確執も書かれているが、胸を打つのは一茶の父を想う気持ち。少年の時に彼が江戸へ向かう時に父が示してくれた愛情が書かれる。ここに書かれている肉親を失う時の身を裂かれるような悲しみは、どんな人でも経験するだろう。「おらが春」は一茶の代表的な作品が織り込まれた句集。有名な「露の世は露の世ながらさりながら」も収録されている。困難の中で身を削るようにして句作を続ける一茶の姿に感動。 2018/09/11
tom
16
俳句の古典を読んでみようと思って、読み始めたのが小林一茶。有名な「おらが春」所収。おらが春は、遺産争いを経て身を落ち着け、結婚して得た「さと」2歳の死を間に挟んで、継子だった自分の半生、子の死、それから死生観をまとめようとしたもの(と解説に書いてある)。娘は疱瘡で死亡。一茶は、数行の中で娘の死を書いている。そのサラリとした書きかたに戸惑ってしまったのだけど、生き残る者の方が少ない時代だったから、娘の死も自然に受け入れたのかもしれない。それにしても、一茶の娘について書いた俳句の素直なこと。2019/03/09
ひさしぶり
14
「我と来て遊べや親のない雀」母を亡くし杖柱と頼んだ祖母も黄泉の人となり消え、自分の身の上が まま子地蔵のようであったならと思ったのであろう「ばた餅や藪の仏も春の風」56歳でできた長女ものさとかれと さと と呼ぶ。障子のうす紙をメリメリむしるに「よくした、よくした」と褒めれば誠と思いキャラキャラと笑いてひたむしりにむしりぬ。「あこが餅、餅とて並びけり」が朝顔の花と共に此世をしぼみぬ。 『父の終焉日記』初七日までの日々生々しい。2019/09/09
moonanddai
4
「ちう位」と思っていたおらが春が、こんな年になるとは思わなかった…。まさに「溺愛の」娘を失ってしまう悲しみが伝わります。それもあってか、「あなた任せ」他力本願で年は暮れます。…そうですか、一茶句集では時系列的に並んでいたこの2つの句の間には、そんなことがあったのですね…。 「我ときて遊べや…」の句も、単なる「子供の情景」というより「みなしご」の寂しさの句だったようで、俳句も上っ面だけではないようです。 「父の終焉日記」。遺産相続を題材とする「自然主義の先駆的作品」と解説にありました。なるほど…。2021/10/26
にゃん吉
4
昔、教科書で目にした句も素晴らしいですが、その他の句も、とても素晴らしい。蛙や雀、虫など小さきものへの視線をはじめとする自然に対する鋭い観察眼、飾らず素朴に見える表現と、自ずとにじみ出るおかしみ(こういうものを、真にユーモアと言う気がしました)。ほのぼのとするようで、ハッとさせられる緊張感。貧しく厳しい生活と、その中で見出したささやかな喜びが、また新たな悲しみや苦しみを生むような、浮世の現実にまみれた人間の煩悩と、信心による、諦念とも紙一重の心境との絶妙な均衡が生み出した逸品というべきでしょうか。 2019/12/21
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