内容説明
収束の兆しが見えない福島原発事故。フォトジャーナリストの著者は、震災直後から福島で取材を重ねる。生活の痕跡を残しつつ人影の消えたまち、放射能汚染や行政の対応に翻弄される住民、廃業を迫られる酪農家、作業員の語る原発労働の現状…。現地の生の声とともに、原発震災下の実態をカラー写真とルポで描き出す。
目次
はじめに―見えない戦場
第1章 終わりの見えない恐怖へ
第2章 漂流する避難民
第3章 放射能に襲われた「までい」の村
第4章 津波と原発震災
第5章 「原発で 手足ちぎられ 酪農家」
おわりに―命を守るために
著者等紹介
豊田直巳[トヨダナオミ]
フォトジャーナリスト。日本ビジュアル・ジャーナリスト協会(JVJA)会員。1956年静岡県生まれ。83年よりパレスチナ取材を開始。95年以降は中東のみならず、アジア、バルカン半島、アフリカなどの紛争地をめぐり、そこに暮らす人びとの日常を取材している。2003年、平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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がんぞ
2
緊急避難地域では、震災後一か月で普通に片づけてない御遺体があった。そのころは牛や犬など動物が悲惨なことになっていたが、現在では植物の力が家屋をほとんど破壊している/「直ちに健康に害はない」枝野発言は不安を煽ったが民主党政権にマスコミは寛容だった。「何十年かあとにガンになる、かもしれない」を恐れて、やみくもに移動させた結果、病人の「関連死」なかには「餓死」まであり、SPEEDI情報を公開しなかったため線量の多い処へ避難もあったという/俺は「1000mシーベルト余命1年減」と考えている。ちなみに喫煙では8年減2017/01/22
Wataru Hoshii
2
震災直後から、地震・津波と原発の二重の被害を受けている現場に入り、取材を続けているフォト・ジャナーリストによる記録。写真だけならば、もっとセンセーショナルなものがすでにネット上で公開されている。遺体しかり、死んだ牛や、野生化したペットも。しかし、そこに住む人の思いを丹念に取材した文章はジャーナリストにしか書けないものだ。その文章があって初めて、写真の向こう側にある真実が見えてくる。ヴィジュアルは雄弁だ。しかしそれを生かすも殺すも伝え手の思い次第だ。2011/08/14
FreakyRider
1
¥800。ちょっと躊躇ったが買って良かった。カラーの写真つきで被災の状況がリアリティーをもって描写される。原発は生活基盤をズタズタにしてしまった。これでもなお原発政策を進めるのか。きちんとした補償をすべきではないのか。自殺する酪農家が出ていることを知っているか。もうおわったことと思っていないか。できるだけ多くの人に読んでほしい。支援は継続的でないと意味がない。2012/03/07
越部社長
1
写真とそれを補足する取材記からなるブックレットで、1時間くらいあれば読める分量だが、そこに込められたメッセージは決してお手軽なものではなく、読んだ後にずしりと重くのしかかる。原発事故直後に実際に福島原発の傍まで近づいたからこそ提示できる実数値の持つ重み、生活の糧を奪われた酪農家たちの日常から拭い去ることの出来ない不安、果ては絶望。そして、そこになんら有効な手を打たない政府に対する憤り。これらは現在進行形の惨状を切り抜いた、被災地の生の声である。2011/12/11
じん★ひで
0
ちょうど二年経過したことを忘れてはいけないと思い、読む。日本人は忘れやすいとよく言われるが、決して消し去ってはいけない出来事が、まだまだ終息していないことの、重みとリアルさを、写真とインタビューで再認識。2013/03/11