出版社内容情報
「「慰安婦」は強制ではなく自由意思で売春をした公娼だった」――被害者の尊厳を踏みにじるこのような声がなぜいまだに聞かれるのか。日本軍「慰安婦」制度が軍によってつくられたことを、史料に基づきながらていねいに説明する。
内容説明
元日本軍「慰安婦」だった金学順さんが日本政府に謝罪と賠償を求めて名乗り出てから20年―「強制」ではなく「自由意志」だったとする声がいまだに多く聞かれるのはなぜだろうか。「慰安婦」制度が軍によってつくられたことを、様々な史料を用いながら説明するとともに、被害者の名誉と尊厳の回復の必要性を訴える。
目次
1 日本軍「慰安婦」制度とは何か
2 五つの「事実」の検証(強制はなかったか―第1の「事実」の検証;朝鮮総督府は業者による誘拐を取り締まったか―第2の「事実」の検証;軍による強制は例外的だったか―第3の「事実」の検証;元軍「慰安婦」の証言は信用できないか―第4の「事実」の検証;女性たちの待遇はよかったか―第5の「事実」の検証;補論 女性たちは募集広告をみて自由意志で応募したか)
おわりに―問題の解決のために
著者等紹介
吉見義明[ヨシミヨシアキ]
1946年山口県に生まれる。1970年東京大学文学部卒業、1972年東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。現在中央大学商学部教授。専攻日本近現代史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スプーン
31
軍の関与を認めないのはなぜか?軍人(自衛隊含む)を美化したいからだろう。戦争は愚なるものである。略奪と強姦は戦にはつきもの。そんな初歩的な戦争知識さえもない多くの日本人。歴史に興味が無い?日本のいい部分だけ見ていたい?馬鹿も休み休み言え。もう暗闇にいるのはまっぴら御免だ。2019/10/18
ちさと
27
軍「慰安婦」とは何か。日本の言説と海外の意見ではなぜここまで違いがあるのか。本書は2007年米連邦議会下院の日本政府への謝罪勧告決議に反対する日本人で組織された「歴史事実委員会」が提示する「諸事実」を検証、明らかにしていくものです。本当の事実って何でしょうね。二次情報や修正された記憶は当てにならない部分もありそう。だけど公娼制度がどこにでもあったからと言って軍による略取・誘拐や人身売買が正当化されるわけではない。主体を明らかにしてきちんと政府が金を出さないと、収拾つかないのが実際のところでしょうか。2018/12/17
壱萬弐仟縁
23
強制(10頁~)ということは、権力を使っている。抵抗できないような状況に追い詰められる(24頁)。このやり方は、原発放射能処理作業の下請構造と同じで、ノーと言えない、いじめ以外の何物でもない。不可逆的な性質を有する。悪質。1886年にはイギリスでは公娼制度は廃止されていた(45頁)。ノルウェー、スウェーデン、デンマークなども廃止していったようだ。歴史認識がまた問われる。2014/03/07
扉のこちら側
12
初読。「道義的な責任を痛感しつつ」といって法的な責任に触れない逃れ方。日本の官僚用語法では「道義的責任=法的責任はありません」とな。2012/12/01
coolflat
9
安倍晋三を初めとする日本の政治家は、軍が間接的に関与したという、いわゆる広義の強制性は認めているが、直接、官憲が家に押し入って連行するような、いわゆる狭義の強制性はなかったと言っている。この協議の強制性という言い訳は、当然だが、国際的には全く通用しない。国際的には広義・狭義に差はなく、罪の重さは同じだ。そもそも強制されたかどうかは関係ない。日本以外では誰もその点に関心はない。問題は慰安婦たちが悲惨な目にあったという事であり、日本の政治家はこの基本的な事実を忘れている、というか、意図的に無視をしている事だ。2014/09/29