内容説明
人生の「真実」を詩情豊かに描き出した二人の作家。独歩の死後刊行された手記『欺かざるの記』(抄)ほか、『源叔父』『武蔵野』、そして湖処子の『帰省』を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
てれまこし
3
明治中期に学生の間に起こった旅行ブームのきっかけとなった小説。確かに旅であるのだが、それは「帰省」の旅。故郷を去って知らない土地に行くんじゃなくて、故郷に帰還するのである。それは桃源郷でありエデンの園である。そこに住む目に一丁字なき人々は天使である。都会で失望した若者が再発見したのは田園生活の美徳。しかし、そこに留まるという選択肢は検討されない。文明の禁断の果実をかじった次男・三男には故郷に居場所はない。結局、故郷は失われた人間性を取りもどす保養地にすぎない。都会は戦場であるとともに生を営む場でもある。2018/05/21