出版社内容情報
明治前期,何をなぜ如何に訳すか.本書は当時のベストセラーを原文と訳文の対訳で読む.異文化を漢語で訳しぬこうとした福沢・兆民・鴎外らの削除加筆や新造語が示すものは? 近代の心性と日本語を照らすバイリンガル版史料集.
内容説明
何をなぜ、いかに訳すか。福沢、兆民、鴎外らは片カナ語を拒み漢語で異文化に挑んだ。思想的限界と起爆力をはらんだ誤訳、造語、削除加筆。翻訳の表層から深層へ―。明治の心性に迫る、バイリンガル版史料集。
目次
1 翻訳の地平(万国公法;アメリカ独立宣言;国法汎論;欧羅巴文明史;英国開化史;社会平権論;非開化論;維氏美学;ジュリアス・シーザー;詩)
2 翻訳者の意見(訳書読法;翻訳の心得;戯曲の翻訳法;箕作麟祥君伝;反翻訳主義の論理)
解説(明治初期の翻訳―何故・何を・如何に訳したか;『万国公法』成立事情と翻訳問題―その中国語訳と和訳をめぐって)
感想・レビュー
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とんこつ
5
加藤周一『明治初期の翻訳――何故・何を・如何に訳したか』を読了。明治初期における西洋智の翻訳運動はどのように行われたのか。そこには中国からの漢字の輸入、江戸時代の蘭学の輸入のそれぞれの経験が元になっていること、そして西洋と日本がともに「歴史的な社会」であったことが大きいと加藤は指摘する。西周などを例に具体的な翻訳実践の状況についても言及されるが、明治期の徹底した翻訳主義とは違い、カタカナ語が反映する今日の状況を思うと、日本語そのものがひどく損なわれていること、日本と東洋の距離が遠くなっていることを感じた。2018/06/26