出版社内容情報
芥川龍之介の理知的で明快端麗な文体は若々しい抒情を湛え,時代を超えてくりかえし人々を魅了しつづけています.新全集は全作品に注解を付し,本文に新字体を採用.判型を軽快な四六判とするなど今日の読者の要望に応えます.
目次
煙管
煙草と悪魔
駒形より
藤娘
校正の后に
MENSURA ZOILI
代表歌選
微明
校正の后に
尾形了斎覚え書〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
25
「或日の大石内蔵助」目当てに図書館で借りる。世間での赤穂浪士達の評判の良さに珍しい陽気も手伝ってか、討ち入りに参加した浪士達の心とともに口も軽くなる。仇討ちに関して、自画自賛するような会話をしている。浪士達が身を寄せている細川氏の家来もさらに煽るような物言いだ。そこで、内蔵助だけが、逆に心に寒気を覚えていくのだ。実際にこのようなことがあったのだろうか。内蔵助が読んでいた三国志は、どの辺りだろう。玄徳を慕う関羽や龍飛達の話だろうか。情景が浮かび、余韻を残す。2013/11/28
てれまこし
9
西洋文学だけでなく日本の古典や漢籍に親しんでいた芥川は、自分の経験を脚色して小説にする作家たちとはちがって、自由自在に古典や伝承、海外文学から素材を集めてくる。それでもそこに描かれる人間は古代の異人たちではなくて、現代人、芥川や読者たち自身だ。たとえば「或日の大石内蔵之助」の微妙な心理は大石ではなく作家自身のものだ。彼自身、いくら良い素材でも自分が入っていくまでは書けないと言ってる。芥川には斜に構えて世の中を眺めてる理知的な作家という印象が持たれるが、自分(たち)自身を他者として突き放して描くからだろう。2023/11/04
よしださいめい
1
図書館本。煙管.煙草と悪魔.駒形より.藤娘.校正の后に.Mensura Zoili.代表歌選.微明.校正の后に.尾形了斎覚え書.運.道祖問答.新春文壇の印象.忠義.貉.葬儀記.羅生門の後に.さまよへる猶太人.偸盗.私と創作.軍艦金剛航海記.産屋.蚊帳の中の蚊.私の文壇に出るまで.二つの手紙.或日の大石内蔵之助.田端日記.蛙.女体.片恋.黄粱夢. 初期の佳作多し。但し「偸盗」は、今でも読み切れない。愛称があるのだらう。2020/06/19
鯉二郎
1
芥川龍之介をもっと深く知るために文庫より全集を読もうと思い、岩波書店の芥川全集を古書店で探して買い続けている。この全集は基本的に小説も随筆も詩歌も、さらに短い挨拶分のようなものまで年代順に収録されている。まるで断簡零墨までかき集めたような印象を受ける。この巻の目次も、どれから読むべきか迷ってしまうほどバラバラな感じがする。だが、巻全体を通して読みにくいかと言えばそうでもなく、この全集の編集方針には次第に納得した。重い作品を読んだ後には、身辺雑記などの軽い短文は息抜きになるからである。2020/02/18
いずみ
0
『羅生門の後に』が読みたくて手に取った一冊。 久しぶりに読んで、言葉の美しさを再確認。2017/02/21