出版社内容情報
あなたが胎児だったとき,ウイルスに守られていた? ウイルスといえば,病気を起こす危険なものとみなされている.ところが最近になって,生物の行動や生命の進化にウイルスがいくつもの重要な役割を果たしていることが明らかになってきた.これまでの常識を覆すウイルスの存在意義を考えてみよう.
内容説明
ウイルスのことを病気の原因で、危険なものとばかり考えていませんか?実はあなたが胎児だったとき、ウイルスはあなたを守る大切な役割をはたしていたのです。地球上には膨大な数のウイルスが存在し、生物の行動や生命の進化に大きな影響を与えていることがわかってきました。これまでの常識をくつがえす、ウイルスの存在意義を考えてみます。
目次
序章 あなたはウイルスに守られて生まれてきた
1 ウイルスはどのようにして見いだされたか?
2 ウイルスは生きているか?
3 人のウイルスはどこから来たか?
4 生物界を動きまわるウイルス
5 病原体だけではないウイルスの意外な役割
6 病気を治すウイルスの利用
7 広大なウイルスの世界
著者等紹介
山内一也[ヤマノウチカズヤ]
1931年生まれ。北里研究所、国立予防衛生研究所、東京大学医科学研究所教授、日本生物科学研究所主任研究員などを経る。東京大学名誉教授、日本ウイルス学会名誉会員、ベルギー・リエージュ大学名誉博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
415
これまでウイルスというのは細菌とともに典型的な病原体であるとばかり思いこんでいた。ところが、それはきわめて狭小な範囲でのことであったようだ。そもそもこの分野の研究が飛躍的に進んだのは比較的最近のことのようであり、人類がこれまでに知り得たウイルス自体が全体のほんの一部であったらしい。たしかにウイルスは30億年以上も前から生物と共存しており、生物にとって一方的な敵であったなら、両者の共存はあり得なかったであろう。それどころか、生物の撰損そのものや進化にもウイルスが関わっていることが分かって来たらしい。2020/07/06
アキ
78
著者は、国立予防衛生研究所で天然痘・牛痘の根絶に関わり、永年ウイルス研究に従事してきた専門家。1897年口蹄疫の原因としてウイルスの発見から、20世紀に病原体としてのウイルス学が発展したが、21世紀になり新たな展開を見せ始めているという。2000年に胎児の合胞体栄養細胞がウイルスにより作られ、2003年ヒトゲノム研究によりトランスポゾンとレトロウイルスの関連により遺伝情報の約半分はウイルスに関連したものであり、更に霊長類の誕生とレトロトランスポゾンの爆発的増加が同じ時期だったため、進化の推進に重要な役割⇒2020/09/14
syota
30
読友の方のレビューで知った本。ウイルスについては、細菌より小さく生物と無生物の境界線上にあるもの、という程度の知識しかなかったので、内容に驚いた。胎児を母体の免疫反応から守る(母体から見れば胎児は異物)善玉ウイルスや、生物の進化を推進するウイルス、地球環境に影響を及ぼしているウイルスなど、知らなかったことばかり。この分野の研究が本格化したのは今世紀に入ってからで、解明されたのは全体のほんの一部に過ぎないとのこと、今後の展開が楽しみだ。最先端の内容を平易かつコンパクトにまとめた好著と思う。2020/09/13
hakootoko
23
細胞に関するものは、聞く度にぞっとする。そもそも人体が細胞からなっているというのがぞっとする。自分の体のなかにいろんな生物がいっぱいいるみたいな怖さ。それじゃなくとも、腸内や口内にいる細菌群の多さ。人混みに入ったとき、「ああ、ここの人たちひとりひとり全員が恋とか悩みとかあるんだあ」ぼええ。みたいになるときと同じ感じで、ぼええってなる。そして、それよりちっちゃなやつら、ウイルスたちの話は、もっとぼええってなる。細胞に入って、増えて、出て行くの?こわいよー。おれのDNAはウイルスも含むってなにその話。こわい。2015/07/26
ふぇるけん
19
人間や羊の出産を守っている内在性レトロウィルスや、光合成するウミウシに存在するウィルスなど、病原菌以外の役割のウィルスについての紹介。海中にはシロナガスクジラ7500万頭分のウィルスが存在しているらしい。生物の誕生から進化にウィルスがどのような役割を果たしてきたのか、研究はまだ始まったばかりだ。2015/10/04