内容説明
民主的であるはずの選挙を通じて権力が一部の人間に集中してしまう―。日本では少数のエリートが意思決定を独占し、人びとの意見が政治に反映されない状態が続いている。今、代表制民主主義を再生させるにはどうすればいいのか。安全保障関連法反対運動をはじめとする直接的な政治参加の高まりを踏まえ、代表の機能を鍛え直すための真摯な考察。
目次
第1章 代表とは何か―代表制と代表性
第2章 政党は何をめぐって競争するのか―政党対立軸の変遷と責任政党政府
第3章 参加を考える―議会の外の代表制/性
第4章 「分配」と「承認」をめぐる政治
第5章 再び参加を考える―グローバル化と経済格差
終章 私たちの声を議会へ
著者等紹介
三浦まり[ミウラマリ]
1967年生まれ。上智大学法学部教授。専攻は政治学、現代日本政治論、ジェンダーと政治。慶應義塾大学大学院法学研究科およびカリフォルニア大学バークレー校大学院修了。同大学でPh.D.取得。東京大学社会科学研究所研究機関研究員等を経て、現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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えむ
2
岩波らしい直球の「アツい」政治分析と社会構想の書。自分の政治的主張には自覚的でありつつも、しっかりとした学問的な知見をもとに議論を進める筆者の姿勢には好感が持てる。ただ、本書がもつ鮮度については難しいところ。今後も読みつがれるかどうか、試練が待っているのは間違いないと思う。2018/08/26
keepfine
1
良著だった。ロバートダールが論じるように、民主主義を基礎付けるのは政党間競争と「参加」。両者をより実質的にするために「多様性」が求められる。日本政治における55年体制/ポスト55年体制の変容などを視野に入れつつ、代表、政党、参加について問い直す。競争型民主主義のもとでは責任政党政府が形成される。すなわち、与党が「落選する可能性」を作り出さなくては権力を抑制したり応答性を引き出したりすることはできない。2021/03/02
お茶
1
がっかり。「機能不全に陥った代表制民主主義をどう立て直すか」という立論はいい。政党の対立軸を際立たせる「左右」の党派性の衰退という点は確かだと思うが、現代の有意な対立軸は「新自由主義対リベラルまたは社民主義しかあり得ず」だそうだ。それも許そう。実際は民主党の政策問題に矮小化されている。民主党応援団の本という印象ぬぐえず。『野党は共闘』の今の声にどう結び付けられるのだろう、と思った。議会への女性参加のあり方としての「パリテ」制については勉強になった。2015/12/27
つ
0
政治学的な知見を取り入れつつ現代日本政治の主要争点を歴史的背景と共にコンパクトに整理した文献という印象。 個人的には代表観や熟議民主主義などの近年の代表制民主主義を巡る議論を期待したが、あくまで基本的な政党論と組織化の問題に焦点が当たっている思われる。 また、諸外国における知見も繁栄する努力が見られるものの、特にアメリカに関わる実証研究としては疑問が残る指摘が数点見受けられたのは残念だった。2020/05/27