内容説明
原爆、水俣病、ビキニ、ヒ素ミルク、そして原発事故―これ以上、人を切り捨て続けると、この国には完全な破局が訪れる。闘う小児科医、渾身の警告。
目次
第1章 森永ヒ素ミルク中毒事件―企業・医者・行政は何をしたのか
第2章 水俣病―国策によって切り捨てられてきた患者たち
第3章 広島・長崎の原爆―なかなか認められなかった被爆
第4章 ビキニ海域水爆実験―予防・治療なき健康調査
第5章 東京電力福島第一原子力発電所事故―放射能安全神話はどう作られてきたのか
著者等紹介
山田真[ヤマダマコト]
1941年、岐阜県生まれ。小児科医。八王子中央診療所理事長。子どもの病気をわかりやすく解説する著書で知られるが、障害のある子をもつ親の当事者として「障害児を普通学校へ・全国連絡会」世話人を務めるなど、さまざまな活動、意見表明を行なってきた。2011年以降は、「放射能から子どもたちを守る全国小児科医ネットワーク」代表として、福島をはじめとして各地で健康相談を受けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
24
低線量被曝を受けた被爆者の多くは被爆者と認められずに切り捨てられており、健康調査もなく、公式には実態が報告されていない(43頁)。これから先、さまざまな症状、病態が起こりうる可能性をわたしたちは引き受け、福島原発被害症候群として認めさせ、それに対する補償も国や東電に遂行させることが必要(48頁)。水俣のチッソは工場からメチル水銀が出ていることを長い間、隠し続けていた(75頁)。イチエフからの、仮置き場からの放射能は大丈夫か? 2015/01/05
coolflat
9
「歴史は人為的に繰り返される」。正にその通りである。本書では、森永ヒ素ミルク事件や水俣病、広島長崎の原爆と、人為的に作り出された災害の歴史を追いながら、今もなお作り出されている福島原発災害を比較している。ヒ素ミルク、水俣、長崎広島の原爆被害者は、ユスリタカリだとか怠け者だとかバッシングされ、同様に福島でも放射能恐怖症とバッシングされる。加害企業を守る専門家集団もまた同じ。いつも被害者を切り捨てる役割を果たしてきた。災害が人為的に作り出されたならば、その後の被害者の状況もまた同様に人為的に作り出されてゆく。2015/03/11
Yuko
3
「森永ヒ素ミルク中毒事件や水俣病の被害者など、国により切り捨てられようとする人たちとともに歩み、長年、現場で闘い続けてきた医師が、その体験をふり返り、行政・企業・専門家によりくり返されてきた問題の根に迫る。」 山田真先生の渾身の一冊。本当に、本当に、いろんな立場の人に読んでもらいたい。森永ヒ素ミルク事件、水俣病、広島・長崎の原爆、ビキニ海域水爆実験、イタイイタイ病、そして福島原子力発電所事故などに見られるように、国から切り捨てられた人々・地域:棄民・棄地の歴史は繰り返されてはならない。 2015/08/24
マウンテンゴリラ
1
アンチ近代や脱原発等、私自身もほぼそれに近い信条の持ち主であるが、著者の足元にも及ばない自分の見識不足と行動力のなさを思い知らされた。ここに書かれている、森永ヒ素ミルク事件、水俣病、そして福島原発事故については我々一般人は、必要悪として、或いは不可抗力的な事件として捉え、深く考えることもなく忘れ去ろうとしている面が無いとは言えないのではないだろうか。人間とは何か、人間にとって普遍的に大切なものは何か、を求める眼差しを失わないことが、このような社会問題,近代史を語る本を読む上で最も重要なことであると感じた。2019/06/23
まつゆう
0
棄民の経験を前に何も言えなくなる。この本はあまりに重たく、読後すぐには自分には感想は書けない。2015/07/15