出版社内容情報
学歴社会の病に苦しんでいるのは日本ばかりではない.教育機能が選別機能に抑圧され,一片の卒業証書のためにみなが競争する状況が世界的に進行している.これは「新しい文明病」だ.その実態を歴史的に跡づけ,各国の教育改革の事例を検討し,学校教育が社会的選別機能から完全に解放され,本来の教育機能を果たす方策を提示する.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きいち
31
「後発効果」…遅れて近代化を始めた国ほど学歴の自己目的化の弊害に早くぶち当たる、その概念の参照のために読んだ。40年前なので時代の制約はあるが、随所の炯眼に目を見張る。今の高大接続やアクティブラーニング化…彼の批判に応えるように現実が進んでいるではないか。◇学力試験よりも適性検査、という提言は承服しがたいものの、これは教育内容が試験目的になりすぎることへの批判。そして、高等教育は一度社会に出てから、という提言は今も有効だ。歴史地理の縦横無尽は、国内の現在だけを論じがちな教育論に対するアンチテーゼでもある。2017/09/12
Jack Amano
2
1975年に書かれたものであるが、その時点で学歴社会の問題点として指摘されていることが、現時点でもまだ大きくは改善されていないことに愕然としてしまいます。事例や統計などは古いですが、基本的な内容は変わらない。ゆとり教育とかの改革の試みはされたが、結果としてはまたもとに戻っている。この本でも、そもそも教育は何のために行うかという点への切込みは浅い。それを所与のものとした場合での、平等の欲求と能力の多様性との調和のとり方に必ずしも明確な方向性を付けられていないように、問題の根はかなり深い。2020/09/21
yokotee
1
「後発効果」と呼ばれる概念が印象的。遅れて近代化した国(日本も含む)は、先進国に少しでも早く追いつこうと、学校による選別を強めてしまう。2011/05/12