出版社内容情報
相互に依存し,呼応関係にある自己と他者との毀れやすい〈あいだ〉から浮かび上がる正義とは何か.自由主義の意味・経験の再検討を通して,「分かち合い」「分かり合い」としての正義,「翻訳としての正義」の可能性を探る.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
白義
5
シュクラーの、残酷さを厭う自由主義や権利の言葉に回収されないニーズの言葉というイグナティエフの問題提起を受け止めながら、人間の傷つきやすさ、空虚さを受け止めて、なお人と人との『あいだ』から始まる正義、倫理を考えていく名著です。何が正義か、ではなく、正義という感覚や言葉が発せられる根底までおりて、翻訳しようとする姿勢が感動的、英米の政治哲学を基礎にしていますが、どこかレヴィナスっぽさもありますね。思考のフロンティアという題の通り、頭、身体に今までにない感覚、思考が芽生える名著でした2011/05/26
バーニング
3
読書会で扱った。<あいだ>概念を理解しきれていないので、ここの勉強をすればもっと理解できるだろうということを確認しあった。2012/09/11
void
2
【★★★☆☆】'99年。一文が入り組んでて読みにくい。消極的自由とも多くの部分で重なるが、恐怖の排除という更に限定することで基底的自由を与えんとするシュクラーの<恐怖の自由主義>の検討(1章)、個人的な不運と社会的不正義の接触・発信/受け取り可能性・社会的議題への「翻訳」(2章)、生存条件確保と「人間らしい生活」という正義の段階差(3章)。全体に亘りミクロ視点。 献案内は参考になったし、「小さい本」なりに話題が絞られてはいたが、それ以上ではなかった。2014/03/26
3
1
正義と題された政治理論の専門家の本でロールズが出てこないばかりか小泉義之がさらっと引用されたりすることもあるんだ2024/02/27
えむ
0
「正義」論の概説ではなく、著者なりに「正義」概念に関する検討を行った1冊。ロールズら、現代英米圏の「正義」論を念頭に置いて読むと面食らうことになるが、シュクラーやイグナティエフらの著述をもとになされる考察からは学ばされることが多い。2019/02/08