出版社内容情報
私たちの日々は,何気なく過ぎていく.著者はその一瞬一瞬に古今東西あらゆる文学作品を感じ,言葉を紡ぎ,やさしく語りかける.精緻な文学研究に裏打ちされた筆致によって,日常生活が連想術のように文学作品とつながり,私たちが生きる一コマ一コマを彩る.のびやかな感性と知性が,体中に満ちてゆく文集.
目次
芝
時間を食べる
鹿に抱かれて
冬眠状態
満ち欠けのあいだに
からっぽの熊
待つことのかたち
詩と唐辛子
ハノイの朝は
城は城でも〔ほか〕
著者等紹介
蜂飼耳[ハチカイミミ]
1974年神奈川県生まれ。早稲田大学大学院文学研究科修士課程修了。詩集に『いまにもうるおっていく陣地』(紫陽社、第5回中原中也賞受賞)、『食うものは食われる夜』(思潮社、第56回芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞)など。絵本に『うきわねこ』(絵/牧野千穂、ブロンズ新社、第59回産経児童出版文化賞ニッポン放送賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
メタボン
30
☆☆☆☆ 蜂飼耳のエッセイは言葉の密度や連なりが独特で、文章を読み解く愉悦が感じられる。ところどころ抜き出して、ゆっくりと読むのにふさわしい。初読なので読み飛ばしてしまったのが、もったいなかった。次はじっくりと読みたい。2022/02/17
壱萬弐仟縁
28
2011年初出。読まなければならない、ということはないところで読む自由がある。他人の頭に相談してなにか学ぼうとするのが読書の内実(1頁)。慣れることがもたらす穏かさは、感覚の死でもある(48頁)。著者にとって、読むたびに違うところが目にとまる文章。たとえば『林芙美子随筆集』岩波文庫(93頁)。著者の読書は、お弁当式だ。あれこれと取り合わせて全体を成す(98頁)。読み返したいのは、W・B・イエイツ『ケルトの薄明』ちくま文庫(107頁)。2016/03/30
sasa-kuma
18
ふつうのエッセイと思って読み始めたら、読書日記的な趣でうれしくなる。岩波書店の雑誌「図書」に連載、タイトルは「ことばに映る日々」。日々の中で出会うことば、年々減っている気がするな。ことばに出会うってステキなことです。詩人なので詩の紹介が多め。気になったのは林芙美子随筆集とイエイツの「ケルトの薄明 」林芙美子は読むたびに違うところが目にとまる文章という表現がぴったりだなと思って再読したくなる。イエイツのは確か伊丹十三繋がりで読みたいと思っていた本。2018/02/12
mm
12
詩人蜂飼さんのエッセイ。 こういうのを読むと、言葉をもっと大切に、丁寧にお取り扱いしなくてはと思います。不在を書くとか、沈黙を語る言葉とか、遠くを近づける言葉とか、ウウム。スマホを持ってても使いこなせないのよねー、という以前に、私は言葉を使いこなせてないわ。2015/03/13
不在証明
9
視点が定まらない、行ったり来たり、というよりも、いつの間にか別の話題に移っている。オビの惹句は岩波書店の「ことばに映る日々を生きる」。はじめにことばありき。つまり、境界なんてないのかもしれない。ひとつひとつを、噛んで含めるように書いている。だから、ゆっくりと目で咀嚼しながら、読む。詩は自由すぎる(ように感じる)のであまり読まないけれど、この本で紹介されている左川ちかの詩は、言葉のチョイスが好みで、詩の面白さが少しわかった気がした。2016/06/16