内容説明
裁判員制度の導入によって市民が刑事裁判をする世の中になった。いかにしたら市民は誤判を避けることができるのか?元裁判官が冤罪を日常的感覚で認識することができる新たな方法論を開示。戦後の冤罪事件を通覧し、その特徴と発生メカニズムをイメージとしてわかりやすく提示する。
目次
序章 市民が有罪・無罪を決めるただ一つの方法
第1章 刑事裁判における証明とは何か
第2章 冤罪ライン1―犯人と第一発見者はどうやって区別するか
第3章 冤罪ライン2―被害者家族が犯人とされる悲劇はなぜ起きる
第4章 市民裁判の真実性の確保のために―冤罪の認識論と存在論
第5章 冤罪ライン3―毒殺のアポリア
第6章 冤罪ライン4―DNA鑑定は信頼できるか
第7章 冤罪を招く捜査の特徴とは何か―冤罪の権力論
第8章 冤罪ライン5―自白したから犯人と言えるか
第9章 冤罪ライン6―犯人の知人・友人が共犯者とされるとき
第10章 冤罪ライン7―第三者の証言の虚実をどう見抜くか
終章 市民の最終決断はいかになされるか―冤罪の正義論
著者等紹介
森炎[モリホノオ]
1959年生まれ。東京大学法学部卒業。東京地裁、大阪地裁などの裁判官を経て、現在、弁護士(東京弁護士会所属)。裁判官時代には、官民交流で、最高裁から民間企業に派遣され、1年間、三井住友海上火災保険(株)に出向勤務した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
だまし売りNo
33
冤罪について知ることは市民のリベラルアーツである。自白は警察や検察のストーリーに沿った作文になる。自白に頼ることは警察不祥事の温床になる。 2023/02/18
kiki
7
裁判員裁判が導入された現在、だれでも市民裁判を行うことになる。「無罪の正義」を守るために冤罪とはどう起こるのか知ることも大切である。犯罪の立証は、誰が、いつ、どこで、だれにたいして、何を、どのようにしたのかに答える形で行われる。冤罪のパターンは、見込み操作→別件逮捕→自白の強要がある。状況証拠の積み重ねによる立証が中心証拠となり、真の問題がわからなくなる。誰を決めるDNA鑑定の危うさもあり、この鑑定のほか犯人の特定で論じる点があるため、その見落としは禁物である。正義とは犯罪を真に立証することである。2014/05/25
あられ
4
題名通りの内容。理論パートは難解だが、冤罪ラインは実際の事件を例示してわかりやすかった。自白は検察、警察の作文だとは知っていたが、物証も時と場合によって、曖昧さがあるとは。疑わしきは被告人の利益に、という原則がしっかり守られねばならない。再審も、開始されやすくなってほしい。人間は間違うのだから、間違いとわかったら、認めて、訂正すればよい。ついでに、死刑が廃止されればよい、と思う。2014/06/07
kj54
4
冤罪の類型を分析し、裁判員裁判において冤罪という不正義を起こさないための啓蒙の書。非常に興味深かった。 プロパーの世界でどのような評価なのかはわからないが、一般人が裁判員裁判を考える際必読ではないか。 冤罪を絶対的な不正義とし、裁判という制度(というか人間)は常に正しい判断を下せるわけではないということを前提に、豊富な実例をもとになされる議論は説得的。 以下余談。所要で警察署に行ったとき、手続き中にこの本を読んでいたのだが、ふと気付いて、あたりを見回してしまった。2014/05/04
myon
3
裁判員となったときの心得として、裁判制度には真相を解明する力は無いということ。2017/11/25