内容説明
二一世紀の日本がアジアの人々とともに生きていくためには、今なお清算されない戦争と植民地支配の責任に向き合わなければならない。六〇年代以降、アジアの被害当事者たちの声に応えて「戦後責任」=日本社会の不正義の問題に、市民として学者として取り組んできたパイオニア三人と気鋭の現代史家が、日本の未来をかけて語り合う。
目次
序章 なぜ、いま、戦後責任を語るのか
第1章 戦争裁判と戦争責任
第2章 一九五二年体制―閉ざされた日本
第3章 人権の内実化とアジアからのまなざし
第4章 サハリン残留朝鮮人の帰還
第5章 責任主体としての市民の創造
著者等紹介
内海愛子[ウツミアイコ]
1941年生まれ。恵泉女学園大学名誉教授、大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター特任教授
大沼保昭[オオヌマヤスアキ]
1946年生まれ。明治大学法学部特任教授、東京大学名誉教授。国際法学専攻
田中宏[タナカヒロシ]
1937年生まれ。一橋大学名誉教授、大阪経済法科大学客員教授
加藤陽子[カトウヨウコ]
1960年生まれ。東京大学教授。日本近代史専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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山口透析鉄
30
これも市の図書館本で読みました。 日本の近現代史に詳しい方々の座談会で、サンフランシスコ講和条約の問題点等から置き去りにされてきた個人補償の諸問題、それぞれの実践の中で得られたものが語られていて、非常に読み応えがありました。 学識経験者であるのと同時に行動の人達でもあるので、マスメディアに出てくる評論屋とは言葉の重みがまるで違うんですよね。 具体的に被害を受けた人がいるので……言うまでもなく、藤岡信勝レベルでは確かに何も見えないです。こういう取り組みの具体例として多くの示唆に富む本でした。2023/05/28
壱萬弐仟縁
29
戦後責任は、’50年代にキリスト者や吉本隆明、武井昭夫が使ったが、定着したのは‘70年代市民運動で定着(ⅹ頁~)。大熊信行『国家悪』1957年の意義は大きいという(大沼名誉教授33頁)。また曰く、人権を守るはずの裁判官には、人権は国民の人権であって人の人権ではないという思い込みがある(98頁)。戦後責任を考える会の活動と停滞(158頁~)。集団的自衛権、特定秘密保護法の時代、責任の内実がシビアに問われる。 2015/01/11
ののまる
10
本当にすごくすごく勉強になった! そしていかに自分が何も知らないかも! 知らなければ。そして血肉にしなければ。焦る焦る。2023/08/20
エドバーグ
7
野中広務が、戦時に死亡負傷された在日の方々への補償法設立に尽力されたのを 初めて知りました。稀有の政治家とは思っていましたが、立つ位置というか視野がここまであったとは。戦後責任の根本は、非欧米の方々への官民そろってある差別意識を抽出して 当事者を変えていく事との主張に深く同意します。2021/01/12
かに
6
戦後、日本に併合されていた朝鮮半島出身者は戦犯としては日本人同様裁かれるが、軍人恩給は貰えなかったり、日本国籍は貰えず韓国政府からは帰国も拒絶されたりした。 日韓請求権協定や日中共同声明もあり、賠償を公には請求出来ないなどの問題もあり、民間には補償がいきわたらない。 そういった戦後責任を対談形式で、これらの問題に向き合う専門家達が問題点や解決に向けての取り組みを話す。2022/12/07