精神を切る手術―脳に分け入る科学の歴史

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  • サイズ B6判/ページ数 217p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784000258432
  • NDC分類 493.72
  • Cコード C0040

内容説明

脳の中を切るロボトミーなどの精神外科は、非人道的な手術として、日本では封印された。しかしそれは、「過去のあやまち」として片付けてよいものではなく、現代の脳科学の研究・臨床とさまざまな形で関わっているのではないか。「精神を切る手術」の歴史から考える、刺激的な脳科学論。

目次

序章 なぜ「精神を切る手術」か―脳の科学と臨床の関係を考えるために
第1章 「偉大で絶望的な治療」―欧米での精神外科の発端と展開(創始者モニスと伝道者フリーマン;様々な代替法の開発―消えた流れと今につながる流れ;退潮と非難を超えて―生き残った精神外科)
第2章 封印された過去―日本の精神外科の歴史(ロボトミーの始まりと広まり;ロボトミーに代わる術式の展開―戦後日本の脳外科、神経科の動向との関わり;学会による否定決議とタブーの定着)
第3章 脳への介入の「根拠」と「成果」―脳科学と精神外科の相互交渉(ロボトミーは前頭葉への注目で始まった―勃興期の精神外科と脳神経回路説;記憶の研究を革新した一症例―眼窩皮質下切截の「副産物」;どこをどう切ればよいか―脳画像研究の進展と精神外科の現在;医療の名のもとに脳にどこまで介入してよいか―治療と臨床試験の狭間で)
終章 脳科学に何を求めるべきか―社会への応用に対する科学研究のあり方

著者等紹介

〓島次郎[ヌデシマジロウ]
1960年生まれ。生命倫理政策研究会共同代表。東京大学大学院社会学研究科博士課程修了(社会学博士)。三菱化学生命科学研究所社会生命科学研究室長などを経て現在に至る。専門は、生命科学・医学の研究と臨床応用を中心にした科学政策論。著書に『先端医療のルール―人体利用はどこまで許されるのか』(講談社現代新書、2001年、NIRA大来政策研究賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

小鈴

16
日本の精神外科についてはこちら。●日本初の精神外科手術は新潟医科大学の中田瑞穂(1893-1975)が1938年に。外科出身。ロボトミーではなくロベクトミー(前頭葉切除)。治療効果は小さかった。ロボトミー手術も試したが安全性、有効性も高く、ロベクトミーではみられないほど、術後に性格の激変をもたらす。しかし、中田の精神外科の学会での報告は精神科医の注目を得なかった。戦争突入。精神外科が盛んになるのは終戦直後だった!。●1946年に米軍医官シュレーダーが精神外科を紹介、47年に日本医学総会で紹介されて普及。2020/11/22

小鈴

15
ロボトミーは決して過去のものではない。その術式が進化して現在に展開されている。ロボトミーの多数の手術から脳機能が解明され今に至る。図6精神外科の術式の展開(39)は必見。ロボトミーから多数生まれた術式の中で定位脳手術が生まれ、 現在の術式から脳の電気刺激(あのヒースの名前が!https://bookmeter.com/books/16702311) から脳深部刺激(DBS)まで!しかし、この本の読みどころは「日本の精神外科」だ。ここにも戦争の影響があった!精神科医は戦地で手術に慣れて脳手術に向かう。。。2020/11/22

フロム

5
狂人は外科治療が施されるまでは隔離と拘束しかなかったのだ。そう考えると薬物治療より外科治療の方が先に発明されたのは運命のイタズラである。その外科手術も20年ばかり早ければナチスがより技術発展させただろうしとタイミングのズレが精神外科をここまで鬼子扱いする羽目になったのでは?と思わずにはいられない。薬物治療や心理療法では限界があるし、リスクを負ってでも状態を改善したいと言う気持ちは道理である。精神外科の萌芽と衰退そして現在の最新治療まで広範且つ網羅的に触れているのでロボトミーの入門書としては最高の一冊2019/12/22

きのこ

4
朝日新聞をみて、図書館予約。ロボトミーに関する流れがわかる。医療目的での脳の介入に関して、その正当性を判断する基準について深く考えさせられる。2012/08/29

春風

3
今ではタブー視されている、ロボトミーなど精神外科の歴史と功罪を冷静に振り返る。2012/07/07

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