出版社内容情報
「常識的な世界観」を擁護するために,量子論のパラドックスに挑み,実在論と非決定論とを両立させた新しい宇宙像の構築を試みる.知的刺激にみちた壮大な論争書,『科学的発見の論理へのポストスクリプト』の完結編.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
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単独事象に関する確率の傾向性解釈は、量子論のパラドックスに向かう。著者は、干渉縞の原因をその「傾向性を決めているのは実験装置の全体」であるとし、二重スリット実験で違いが生じるのは数式自身に「波動の性質」があるからだとする。ハイゼンベルクの確率の主観的解釈を再び論駁し、ボルンの統計解釈をボーアの相補性解釈と矛盾するにもかかわらず著者が採用するのは、観測者なしの確率が力の相互作用による開かれた宇宙を展開するからだろう。序文でファイヤアーベントが著者を批判し、著者や編者もそれに反論する本書は論争のアゴラとなる。2017/02/23