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内容説明
超越の叡知との邂逅をのぞみ、その存在の闡明に賭した哲学者の先駆的意義とその思想圏を開示。吉満義彦(1904‐45)の生涯と思想を中軸に、同時代の思想家、文学者が対峙した問題をも敷衍した初の精神史的評伝。
目次
改宗と回心
洗礼―岩下壯一との邂逅
霊なる人間
留学
超越と世界
中世と近代
霊性と実在するもの
聖母と諸聖人
犠牲の形而上学
異教の詩人
詩人の神・哲学者の神
使徒的生涯
未刊の主著
著者等紹介
若松英輔[ワカマツエイスケ]
1968年生。慶應義塾大学文学部仏文科卒。批評家。「越知保夫とその時代」で第14回三田文学新人賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Gotoran
37
吉満義彦の生涯を主軸にしながら同時代に生きた国内外の哲学者、文学者、宗教家(岩下壮一、内村鑑三、鈴木大拙、井筒俊彦、小林秀雄、中野重吉、越知保夫、マルセル・マルタン、リルケ、シュタイナー、デカルト、パスカル、ニーチェ等々)が対峙した時代に生じた問題までをも視野に入れて記された精神史的評伝。吉満がキリスト 者としてではなく哲学を窓にしてすべての宗教の基底にある霊性を探求した独自の思想家であると述べている。好みの若松著書ゆえ読んでみたが、表面的な読みに留まってしまった、通読の域を出ず。 2018/09/26
壱萬弐仟縁
31
カトリシズム。享年41歳。初の精神史的評伝(表紙見返し)。哲学は市井の民衆の叡智として豊かに育まれる(ⅷ頁)。徳之島を支配したのは、琉球王国、薩摩藩、明治政府(14頁)。民衆とは、自らを含めた救済を望む貧しき人々(14頁)。信仰とは自由の彼方で生きることだと考えることだ(53頁)。読むとは歴史に参与すること。時代に放たれた言葉を永遠の相において見る。永遠の実在を教える(75頁)。2016/03/18
パブロ
8
「鈴木大拙と井筒俊彦の『霊性』をつなぐミッシングリンク」と言う著者。この著者の『井筒俊彦』を読んだときも思ったけれど、評伝はこんなにも精緻に読み込まなければいけないのか、と感嘆してしまった。そして、こんなキリスト教哲学者がいたのを今まで私は知らずにいたことを悔やませてくれた一冊。この人、あの悪名高き「近代の超克」で論争していたんだ〜。「天使を黙想したことのない人は形而上学者とは言えない」という吉満義彦は、単なる「カトリック」を超え、普遍的な「霊性」を目指す。人間の精神はかくも清冽に高みへと上昇できるんだ!2015/04/21
amanon
1
2度目の再読。それでも新たな発見と知的興奮と驚きに事欠かず、あちこちに付箋を貼ってしまった。カトリック、プロテスタントの代表者が時に反発しながらも深いところで、互いに認め合っている姿に、改めてエキュメニズムの兆しが感じられる。また、プロテスタントだけに止まらない他州派との関係性、また文学者との交流など、あの時代によくもこれまでと言いたくなるくらいに、多様な領域の知識人と吉満が関わっていたという事実に驚愕。吉満とその師岩下壮一がせめて後数年でも長生きしていたら日本の知的状況が大きく変わっていたに違いない。2021/11/14
amanon
1
充実した読後感…再読だが、初読時以上の知的興奮を覚えるのと同時に未消化部分を感じ、すぐにでもまた読み返したくなってしまった。キリスト教を始めとする様々な信仰に通底する霊性とは何か?信仰とは?文学と宗教と哲学との関係性…多様な問題を絡めながら、吉満という稀有な知性の持ち主の生涯を解き明かしていくのと同時に、彼が生きた時代の思想状況が克明に描かれる。様々な立場の人が時に共鳴し、対立し、語り合い、離れていく…その人間模様は現在にはない濃さを感じる。そして吉満とその師岩下壮一の生涯が短命だったのが惜しまれる。2021/04/01