出版社内容情報
「節子よ!」没後10年に明かされる、作家・吉村昭から愛する女性=妻への手紙。夫婦作家、慈しみの軌跡。
内容説明
「節子よ!」没後十年に明かされる、作家・吉村昭から愛する女性=妻への、妻から夫への手紙の束百余通。長い苦節の時代、家族と遠く離れ孤独に苛まれる取材の旅、そして、妻への最後の手紙となった遺書―。決心、希望、情熱、望郷、愛、いたわり等々の男の心、女の気持ちが装いなく吐露された言葉の数々。夫婦作家、慈しみの軌跡。
目次
文学はつきつめた戦ひです(いのちをかける仕事;遅まきの青春 ほか)
夫婦つて美しいと思ふ(折りたたんだ手紙;旅あきない ほか)
帰りたい(沖縄へ;遺書のような手紙 ほか)
節子さんへ(安住を求めて;三回の海外取材 ほか)
著者等紹介
津村節子[ツムラセツコ]
1928年福井市生まれ。作家。1964年「さい果て」で新潮同人雑誌賞、65年「玩具」で芥川賞、90年『流星雨』で女流文学賞、98年『智恵子飛ぶ』で芸術選奨文部大臣賞、2003年に恩賜賞・日本藝術院賞、11年「異郷」で川端康成文学賞、『紅梅』で菊池寛賞を受賞。2006年に夫の吉村昭が死去。日本藝術院会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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油すまし
42
人生はよく旅に例えられますが、ご夫妻の出会いから始まる手紙でたどる旅に、読者はおふたりの著書を読むことでほんの少しでも参加させてもらえているのかもしれないと思いました。吉村さんは取材のため旅を多くされていますが、人生という旅もまた吉村さんの著書を超える素晴らしさです。ご夫婦の絆だけでなく吉村さんの弟の隆さんとの絆にも感じ入りました。隆さんが、津村節子さん芥川賞受賞の夜のことを書いた記録は何度読んでも涙します。2021/10/20
fwhd8325
27
なんであれ、美しいものが好きです。吉村昭さんの小説は、美しいという表現が似合うものと信じています。奥様の津村さんが書かれたこの作品は、ラジオドラマで聴いたものでした。竹下景子さんと西田敏行さんが語るのだから、これも贅沢です。夫婦の物語であると同時に吉村さんの弟さんとの想い出の物語でもあります。人は、強く、弱い。そして、美しい。2017/02/13
seiko★
11
吉村さんと津村さんの信頼と尊敬で結ばれた夫婦愛がほとばしった手紙の数々・・・日常の夫婦の繋がり家族の繋がりに心が暖かくなった。いつもこんな夫婦こんな家族であったら・・・感謝を忘れない心でいよう!!2016/10/05
Quijimna
9
吉村昭の妻、津村節子もまた芥川賞作家だったのね。2人の往復書簡で綴るエッセイ。等身大の天才の息遣いを感じる、しみじみとした一冊。配偶者の偉大さを、嫌味なく表現しているところも見事。2020/06/20
駄目男
8
津村さんには、夫吉村昭氏の闘病生活を綴った『紅梅』という作品があるが、本書は二人の往復書簡などから、帰り来ぬ数々の思い出を追悼記のように纏めあげたもので、残された者の哀しみが読む者に伝わってくる。吉村さんの本は多く読んだが、氏の作品は歴史小説というのではなく記録文学というらしい。当初はそのような作家になるつもりはなかったようだが、次第にのめり込んでいったのか、徹底した調査に基づいた素晴らしい作品を多く残した。そのためには取材を兼ねた出張も多く、旅先から書いた手紙を含め大事に取っておいたんでしょうね。 2019/06/07