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日本海軍はなぜ過ったか―海軍反省会四〇〇時間の証言より

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  • サイズ B6判/ページ数 154p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784000242899
  • NDC分類 397.21
  • Cコード C0021

出版社内容情報

勝算もなく、戦争へ突き進んでいったのはなぜか。「国の将来なんか考えるよりも、自分の局部局部でやりまして」「本当に検討されず、どんどん勢いに流されていった」――。太平洋戦争の作戦立案をした海軍トップエリートたち。その生の声を記録した「海軍反省会」録音テープによって、はじめて明かされる日米開戦の内実。その衝撃をめぐる白熱の鼎談。

■ 「はじめに」より
 (「海軍反省会」録音)テープの発見から三年の取材を経て,私たちは「第一回 開戦 海軍あって国家なし」「第二回 特攻 やましき沈黙」「第三回 戦犯裁判 第二の戦争」と題してNHKスペシャルを放送した.
 このシリーズ番組には,若い世代や社会の一線で働く中堅層を中心に2000件を超える意見が放送直後よりNHKに寄せられ,私たちの想定をはるかに超える非常に大きな反響を呼んだ.(中略)多くの人たちが,番組で取り上げたことを現代日本で起きている問題,自分たちの問題と重ねあわせて視聴してくださったことが分かった.
 それは私たち制作者の思いとも重なり,本当に嬉しいものだったが,一方で,あまりの反響の大きさに私たちは,これをどう受け止めたらよいのか,そして今後すべきことは何なのか,という問題を考えざるをえなくなった.制作チームで話し合った結果,反響を寄せてくださった視聴者の方々へ向けて,「昭和と戦争」に関する第一人者に,「海軍反省会」が今に伝えるメッセージを,鼎談という形で考えていただく番組を制作することにした.そのなかに,私たちが今後取り組むべきことを探りたいとも考えたからだ.
 出演は,私たちが番組の感想をどうしても伺いたいと考えた方にお願いした.それが,半藤一利さんと澤地久枝さんだった.お二人は私たちの申し出を快く受け入れてくださり,さらに戸高さんも加わっていただけることになった.(中略)番組の鼎談にさらに加筆をした本書は,番組をご覧になっていない方にも,半藤さん,澤地さん,戸高さんが伝えたかったことが,十二分に伝わる内容になっている.本書を,特に戦争を知らない,これからの日本をつくってゆく若い方々に,是非読んでいただければと願っている.
 それが,半藤さん,澤地さん,戸高さんの切なる願いであるからだ.
NHK大型企画開発センター チーフ・プロデューサー 藤木達弘

■ 鼎談者プロフィール

澤地久枝(さわち ひさえ)
1930年東京都生まれ.敗戦で旧満州より引き揚げ,のち中央公論社勤務を経て,ノンフィクション作家.主な著書に『妻たちの二・二六事件』,『火はわが胸中にあり』(日本ノンフィクション賞),『滄海よ眠れ』『記録ミッドウェー海戦』(ともに菊池寛賞)など.

半藤一利(はんどう かずとし)
1930年東京都生まれ.文藝春秋で「週刊文春」「文藝春秋」編集長,取締役などを経て,作家.主な著書に『日本のいちばん長い日』,『ノモンハンの夏』(山本七平賞),『昭和史』(毎日出版文化賞特別賞),『あの戦争と日本人』,『聯合艦隊司令長官山本五十六』など.

戸高一成(とだか かずしげ)
1948年宮崎県生まれ.財団法人史料調査会理事,厚生省所管「昭和館」図書情報部長などを経て,呉市海事歴史科学館(大和ミュージアム)館長.著書に『聞き書き・日本海軍史』,『海戦からみた日露戦争』など,編書に『証言録 海軍反省会』など.

■ 目次

はじめに――「海軍反省会」と私たち   藤木達弘
海軍反省会と,その記録について   戸高一成

1 海軍反省会,生の声の衝撃
取材で関わった海軍の人々
反省会を構成したメンバー

2 海軍という組織
軍令部総長,伏見宮
開戦前の日本をめぐる国際情勢
第一委員会の問題
軍事予算と軍備計画
海軍の作戦構想

3 海軍はなぜ過ったのか
長期展望の欠如
「それで勝てると思っていた」
排除の論理
組織の思考能力
エリートたちの過ち

4 戦争を後押ししたもの
日露戦争以来の大国意識
開戦のための計画
国民の熱狂
一銭五厘の葉書
特攻計画への決断

5 海軍反省会が伝えるもの
責任の所在
歴史を学ぶということ

次世代へ伝えたいこと――私の戦争体験
歴史から人間を学ぶ――東京大空襲の夜
無知なる恥ずかしさ――満州からの引き揚げ
中継ぎ世代の任――代わりに言う
戦争体験の物語化への危惧

おわりに   澤地久枝・半藤一利・戸高一成
掲載内容 岩波書店ホームページより

内容説明

戦後三五年を経て密かに始められた「海軍反省会」。部外者に公開されることのなかった会の記録が、録音テープに残されていた。その長さ、四〇〇時間―。そこには、海軍トップエリートたちの実像や、戦争突入への実際の経緯などが生々しく語られていた。勝算もないまま、なぜ日本は、戦争へ突き進んでいったのか?反省会の肉声の証言がもたらす衝撃をめぐって繰り広げられた白熱の議論。NHK放送の鼎談番組を収録。

目次

1 海軍反省会、生の声の衝撃
2 海軍という組織
3 海軍はなぜ過ったのか
4 戦争を後押ししたもの
5 海軍反省会が伝えるもの
次世代へ伝えたいこと―私の戦争体験

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

CTC

11
15年7月岩波現代文庫。単行本は11年刊。“海軍反省会”の存在が明らかとなり、これを題材とするNHKスペシャル放映後の、澤地久枝、半藤一利、戸高一成各氏による鼎談。“反省会”の細かな内容には立ち入らず、要部の事情解説や各氏の所感が読みどころ。例えば条約派=海軍省が持っていた「編成権」を、艦隊派が奪う(共有)のだが…これは宮様を軍令部総長に据えたり条例を定めたりと周到に行われる。当時の海軍の不健全な事実を、元の艦隊派と条約派が混じり合う“反省会”で、当事者同士が「謀略だ」と話す事に意味がある、と。確かに。2016/06/28

モリータ

9
啓蒙書として海軍善玉説をひと通りおさえてからアンチテーゼとして読むといいとは思うが、メインの証言録や半藤・澤地の仕事からは中途半端に離れてしまっているように感じる。それとは別に、システムの更新・拡大を戦争をしつつ行うということがまさに泥縄であること、明治維新・日露戦争のような戦乱=大状況が英傑を生み出すことはあれ、最も露骨な形で現場主義を生み出してしまう点で、軍人教育とまったく矛盾するものであることに気付いた。この点、アメリカなんかは前線経験というファクターをどのように処理しているのだろう?2013/10/12

キミ兄

6
反省会400時間を聞いた人の感想という時点で二次資料でありしかも半藤、澤地というメンバーにより偏っていることを念頭においても、あまりに海軍・陸軍だけであの時代のすべてを語ろうとしていないか。そして軍部の見方にも大きな偏りを感じる。政党や民衆、経済情勢も含めての戦争だったはずなのに軍部暴走というだけの決着の付け方は個人的すぎる。 半藤の認識・記憶違いもひどい。有栖川宮熾仁親王を素人扱いしたり、澤地に「神風(かみかぜ)で勝てると思ってましたか」と聞かれて「特攻隊のころは勝てないと思っていた」という回答。☆。2020/07/26

yamatoshiuruhashi

5
識者三人。鼎談から何が生み出されたのだろうか?ただ、「失敗を厳しく裁き歴史を知ること」の重要性には納得。どうも、「海軍反省会」の記録を読むなりDVDを見ないとこの本だけでの完結性に乏しい。2012/02/14

ざび

4
はじめにNHKの方から読んだ方が良かったみたい。最後の沢地氏、半藤氏の戦争体験の話にはやはり圧倒される。2012/02/22

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