出版社内容情報
歴史がいまほど社会のあらゆる局面で生々しい課題となったことはない.19世紀の歴史小説からインターネットまで,私たちに過去のイメージを植えつけてきた諸メディアの文法を解読し,「歴史への真摯さ」を提唱する.
内容説明
かつてない規模で社会生活に介入している歴史の亡霊と取り組むために、グローバルな社会を生きる新たな倫理のために、「歴史への真摯さ」を提言する。
目次
第1章 過去は死んでいない
第2章 想像しがたい過去―歴史小説の地平
第3章 レンズに映る影―写真という記憶
第4章 活動写真―歴史を映画化する
第5章 視角―漫画の見る歴史
第6章 ランダム・アクセス・メモリー―マルチメディア時代の歴史
第7章 “歴史への真摯さ”の政治経済学に向かって
著者等紹介
モーリス‐スズキ,テッサ[モーリススズキ,テッサ][Morris‐Suzuki,Tessa]
1951年イギリス生まれ。バース大学で博士号取得。現在、オーストラリア国立大学教授(太平洋アジア研究学院)
田代泰子[タシロヤスコ]
1944年生まれ。国際基督教大学教養学部卒。翻訳家
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆうき
2
私たちは過去の中で生きている個人の記憶とメディアによって出来事が歴史認知によって誰に共感するか、どんな感情を持つかによって過去は決定されていく。しかし、現在の社会は記憶をグーロバル化と情報技術の発達によってあらゆる現象は過去にならずに消費され亡霊となっていく。私たちは真摯な態度で過去と向き合い相互主義でそれぞれの立場になって自分の「目を開いて」歴史を認識していくことが重要だ。2012/08/03
ちぃ
1
私たちの歴史観はテレビ、映画、小説、漫画なとなどメディアによって「つくられている」よ。というのを多角的に検証した本。実際にあった出来事をモチーフにしてたとしても、語りなおされた物語はもう史実ではない。という本。卒論を書くときに大いに参考にしたけれど、今読み返してみるとさらに実感を伴って迫ってくる。
上高野
0
「人が歴史から学ぶ唯一の真実は、人は歴史に学ばないということだ」と言ったのは誰だったのか、失念した。一面では正しいと思うが、権力は大衆が歴史を直視しない手法を巧妙に学んできたと思う。大衆の過去の理解は大衆メディアが語る過去の「想像風景」によって多大な影響を受ける。遠くなった過去の事実を科学的に論証するのはきわめて難しい。ならば「人々が過去の意味を創造するプロセスの"真摯さ"を検討評価するほうが有益ではないか」と提案し、その方法を示したのが本書だ。実験的ではあるが、一つの見識だと思う。2016/07/09