数の魔力―数秘術から量子論まで

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  • サイズ B6判/ページ数 273,/高さ 20cm
  • 商品コード 9784000055345
  • NDC分類 410.4
  • Cコード C0041

出版社内容情報

聖書の文言に、バッハの調べに、秘められた数の暗号。人の思考を助けるのが数なら、振り回すのもまた数だ。「数える」という営みが築き上げた叡智と、叡智からこぼれ落ちた闇の深さを、ごく初歩の数式のみでみごとに描き出す。

数はしばしば,数が本来意味している以上のものに祭り上げられてきた.数はその合理的側面のゆえに,古き神話の破壊者の役を託されながら,同時に絶えず新たな神話の創造者としての役割をも果たしてきた.そしてまさにそれゆえに,客観性と形式性と公平性と効率性をそなえていたはずの数は,時としてその正反対のものへ,すなわちもっとも主観的で実体的で,不公平で非効率なものへと転化していく.数をめぐる脱魔術化と再魔術化の闘争は,文化史のもっとも興味深いドラマの一つといえる.
 だが今日に至るまで,政治史や経済史に比べて,数をめぐる文化史にはあまり光が当たってこなかった.それは,あまりにも数が人間と歴史を超越し,時間と空間のかなたに存在しているかのように見えてしまうからだ.しかし実のところ,数はわれわれの文化史に長く,巨大な影を投げかけている.その影の跡を太古から現代に至るまで丹念に辿り,人類史の隠されたドラマを明るみに出したのが,本書におけるタシュナーの大きな功績だった.
 著者が今,本書を執筆したならば,最後にもう一つ「数と富」という一章を付け加えたい誘惑に駆られたかもしれない.人間の富や豊かさが貨幣によって量られてきた一つの時代が今や曲がり角にさしかかろうとしている.数に,数が意味している以上のものを期待し,数を神話化する者は,その数によって裁かれる.これは本書のあらゆるページから聞こえてくる警告だ.数から逃れることのできない現代に生きる読者一人ひとりにとって,本書が,数とは一体何であったのかということと同様に,数とは一体何でなかったのかということを考え直す機会となれば,訳者としてこれ以上の幸いはない.
――本文「訳者解説」より

まえがき
  1.ピタゴラス――数と象徴
  2.バッハ――数と音楽
  3.ホーフマンスタール――数と時間
  4.デカルト――数と空間
  5.ライプニッツ――数と論理
  6.ラプラス――数と政治
  7.ボーア――数と物質
  8.パスカル――数と精神

 原著者謝辞
 訳者解説
 図版出典
 年 表
 人名索引

Rudolf Taschner(ルドルフ・タシュナー)
1953年オーストリア生まれ.ウィーン大学で数学と物理学を学び,1977年よりウィーン工科大学で教鞭をとる.現在,同大学解析・計数工学講座教授.専門分野での研究に従事するかたわら,ウィーンのミュージアムクォーターを拠点に数学の啓蒙活動に貢献.近年は数学を切り口にした斬新な文化史的著作を次々と出版し,多くの読者を得ている.本書により,オーストリア科学ジャーナリスト協会より「サイエンティスト・オブ・ザ・イヤー 2004年」に選ばれた.

《訳者》
鈴木 直(すずき ただし)
1949年生まれ.東京大学大学院人文科学研究科修了.現在,東京経済大学経済学部教授.専門はドイツ思想史,翻訳論.著書に『輸入学問の功罪』(ちくま新書),訳書に『5分でたのしむ数学50話』(正・続),『ヒトラー 最期の12日間』(以上,岩波書店),『資本論』(共訳,筑摩書房),『ジンメル・コレクション』(共訳,筑摩書房)など.

内容説明

聖書の文言に、バッハの調べに、秘められた数の暗号。人の思考を助けるのが数なら、振り回すのもまた数だ。机上の数遊びは遙かな宇宙を思い描き、一方ではミクロな物質世界の実態をあばき出す。「数える」という営みによって築き上げられた人類の叡智と、叡智からこぼれ落ちた闇の深さを、ごく初歩の数式のみを用いてみごとに描き出した一冊。

目次

1 ピタゴラス―数と象徴
2 バッハ―数と音楽
3 ホーフマンスタール―数と時間
4 デカルト―数と空間
5 ライプニッツ―数と論理
6 ラプラス―数と政治
7 ボーア―数と物質
8 パスカル―数と精神

著者等紹介

タシュナー,ルドルフ[タシュナー,ルドルフ][Taschner,Rudolf]
1953年オーストリア生まれ。ウィーン大学で数学と物理学を学び、1977年よりウィーン工科大学で教鞭をとる。現在、同大学解析・計数工学講座教授。専門分野での研究に従事するかたわら、ウィーンのミュージアムクォーターを拠点に数学の啓蒙活動に貢献。近年は数学を切り口にした斬新な文化史的著作を次々と出版し、多くの読者を得ている。『数の魔力―数秘術から量子論まで』により、オーストリア科学ジャーナリスト協会より「サイエンティスト・オブ・ザ・イヤー2004年」に選ばれた

鈴木直[スズキタダシ]
1949年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修了。現在、東京経済大学経済学部教授。専門はドイツ思想史、翻訳論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

takao

3
ふむ2022/09/06

メロン泥棒

3
まさに「数の魔力」に取り憑かれた話が8編。聖書の文字を数字に置き換えてそこに秘められた暗号を読み取る「数秘術」は数の不思議な一致に驚くが、オカルト的なこじつけじゃないかと思う部分もある。しかし、物理学で有名な水素スペクトルのバルマー系列の発見はすごい。7桁の数字の羅列から自然数の逆自乗の差という美しい数式を導く執念は数の魔力に取り憑かれたとしか思えない。そして、それが量子力学の本質を表していることにさらに驚愕する。数式にこだわると難しいが、人間を虜にしてきた「数」の物語として読むと非常に刺激的。2010/12/16

pippi

2
“かず(数)”に八っの方面から光を当てて、そこに現れる奥深い姿の文化史。各章いずれも知的好奇心を刺激する内容に充ちている。再読、精読、熟読したい。2012/07/05

Mits

2
数学の本ではないです。数が、人間が世界を認識するためにどう使われてきたかが主題でしょうか。いろいろと、これまでの思い込みとは違う「ものの見方」を教えられる本で、なかなか面白かったです。興味深かったのは、音階ってそういうものだったのかと初めて知った2章と、バルマー系列が発見された経緯を初めて知った7章。2010/09/04

もも

1
絵画、音楽、政治、科学…など8つの分野における異なる数の振る舞いについての本です。予想に反して、この本を楽しむためには読者にある程度の知識が求められていると感じました…。音楽に明るくない私にとって第2章「数と音楽」は意味が分からず非常に苦痛な章でした。反対に第7章「数と物質」は量子論についての話題でリュードベリ定数が出てくる経緯、測定値からバルマーの公式が導かれるまでの過程が易しく書かれていて面白かったです。個人的には第1章の絵画や聖書の数に基づく解釈など、こじ付けとはいえ熟考された力作なので好きです。2012/08/04

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