出版社内容情報
聖書の文言に、バッハの調べに、秘められた数の暗号。人の思考を助けるのが数なら、振り回すのもまた数だ。「数える」という営みが築き上げた叡智と、叡智からこぼれ落ちた闇の深さを、ごく初歩の数式のみでみごとに描き出す。
数はしばしば,数が本来意味している以上のものに祭り上げられてきた.数はその合理的側面のゆえに,古き神話の破壊者の役を託されながら,同時に絶えず新たな神話の創造者としての役割をも果たしてきた.そしてまさにそれゆえに,客観性と形式性と公平性と効率性をそなえていたはずの数は,時としてその正反対のものへ,すなわちもっとも主観的で実体的で,不公平で非効率なものへと転化していく.数をめぐる脱魔術化と再魔術化の闘争は,文化史のもっとも興味深いドラマの一つといえる.
だが今日に至るまで,政治史や経済史に比べて,数をめぐる文化史にはあまり光が当たってこなかった.それは,あまりにも数が人間と歴史を超越し,時間と空間のかなたに存在しているかのように見えてしまうからだ.しかし実のところ,数はわれわれの文化史に長く,巨大な影を投げかけている.その影の跡を太古から現代に至るまで丹念に辿り,人類史の隠されたドラマを明るみに出したのが,本書におけるタシュナーの大きな功績だった.
著者が今,本書を執筆したならば,最後にもう一つ「数と富」という一章を付け加えたい誘惑に駆られたかもしれない.人間の富や豊かさが貨幣によって量られてきた一つの時代が今や曲がり角にさしかかろうとしている.数に,数が意味している以上のものを期待し,数を神話化する者は,その数によって裁かれる.これは本書のあらゆるページから聞こえてくる警告だ.数から逃れることのできない現代に生きる読者一人ひとりにとって,本書が,数とは一体何であったのかということと同様に,数とは一体何でなかったのかということを考え直す機会となれば,訳者としてこれ以上の幸いはない.
――本文「訳者解説」より
まえがき
1.ピタゴラス――数と象徴
2.バッハ――数と音楽
3.ホーフマンスタール――数と時間
4.デカルト――数と空間
5.ライプニッツ――数と論理
6.ラプラス――数と政治
7.ボーア――数と物質
8.パスカル――数と精神
原著者謝辞
訳者解説
図版出典
年 表
人名索引
Rudolf Taschner(ルドルフ・タシュナー)
1953年オーストリア生まれ.ウィーン大学で数学と物理学を学び,1977年よりウィーン工科大学で教鞭をとる.現在,同大学解析・計数工学講座教授.専門分野での研究に従事するかたわら,ウィーンのミュージアムクォーターを拠点に数学の啓蒙活動に貢献.近年は数学を切り口にした斬新な文化史的著作を次々と出版し,多くの読者を得ている.本書により,オーストリア科学ジャーナリスト協会より「サイエンティスト・オブ・ザ・イヤー 2004年」に選ばれた.
《訳者》
鈴木 直(すずき ただし)
1949年生まれ.東京大学大学院人文科学研究科修了.現在,東京経済大学経済学部教授.専門はドイツ思想史,翻訳論.著書に『輸入学問の功罪』(ちくま新書),訳書に『5分でたのしむ数学50話』(正・続),『ヒトラー 最期の12日間』(以上,岩波書店),『資本論』(共訳,筑摩書房),『ジンメル・コレクション』(共訳,筑摩書房)など.
内容説明
聖書の文言に、バッハの調べに、秘められた数の暗号。人の思考を助けるのが数なら、振り回すのもまた数だ。机上の数遊びは遙かな宇宙を思い描き、一方ではミクロな物質世界の実態をあばき出す。「数える」という営みによって築き上げられた人類の叡智と、叡智からこぼれ落ちた闇の深さを、ごく初歩の数式のみを用いてみごとに描き出した一冊。
目次
1 ピタゴラス―数と象徴
2 バッハ―数と音楽
3 ホーフマンスタール―数と時間
4 デカルト―数と空間
5 ライプニッツ―数と論理
6 ラプラス―数と政治
7 ボーア―数と物質
8 パスカル―数と精神
著者等紹介
タシュナー,ルドルフ[タシュナー,ルドルフ][Taschner,Rudolf]
1953年オーストリア生まれ。ウィーン大学で数学と物理学を学び、1977年よりウィーン工科大学で教鞭をとる。現在、同大学解析・計数工学講座教授。専門分野での研究に従事するかたわら、ウィーンのミュージアムクォーターを拠点に数学の啓蒙活動に貢献。近年は数学を切り口にした斬新な文化史的著作を次々と出版し、多くの読者を得ている。『数の魔力―数秘術から量子論まで』により、オーストリア科学ジャーナリスト協会より「サイエンティスト・オブ・ザ・イヤー2004年」に選ばれた
鈴木直[スズキタダシ]
1949年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修了。現在、東京経済大学経済学部教授。専門はドイツ思想史、翻訳論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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