出版社内容情報
近代世界の形成に大きな役割を果たしながら,これまで十分理解されてこなかった民族問題.「ナショナリズムとは何か」という難問に,英国哲学界の巨人ゲルナーが,該博な知識を駆使して解明を試みた名著,待望の全訳.
内容説明
「近代世界の形成と再形成とに果たした力は明白でありながら、それに取りつかれていない人間には依然として他人事で理解不可能なままにとどまっているナショナリズム」、その本質は何か、この難問に、英国哲学界の巨人ゲルナーが、政治社会学、社会人類学などの該博な知識を駆使して解明を試みる。1983年の刊行以来、「第一級のナショナリズム研究書」と高く評価され、大きな影響を与えてきた現代の名著、待望の完訳なる。
目次
第1章 定義
第2章 農耕社会における文化
第3章 産業社会
第4章 ナショナリズムの時代への移行
第5章 民族とは何か
第6章 産業社会における社会的エントロピーと平等
第7章 ナショナリズムの類型
第8章 ナショナリズムの将来
第9章 ナショナリズムとイデオロギー
第10章 結論
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
獺祭魚の食客@鯨鯢
44
SDGsという理想主義(アイデアリズム)の現実性(リアリズム)を考える。 「衣食足りて礼節を知る」世の中がコロナと戦争に明け暮れている中では、そんな空気は吹き飛んでしまった。 資源大国ロシアのなりふり構わぬ振る舞いは、そんなに時代に逆行する様にも思えない。天然ガスや小麦の供給が途絶えそうな今、それでも理想を追い求めますかと彼らは言っているように見える。 わが国のスタンスは150年前の幕末と変わらない。「泰平の眠りを覚ます蒸気船たった四杯で夜も眠れず」 米国のリベラリズム政権の理想主義発言の空虚感。 2022/05/01
非日常口
29
ナショナリズムは同質性、読み書き能力、匿名性を特性とし直接この単位に所属するという愛国主義(p230要約)といえる。「差別=良くない」という条件反射の否定は正しいか?探せば全ての人に差異は存在し、また結び付きもある以上、グループ化やクラス別も言い換えれば差別化となる。耐エントロピー構造が常に存在する複雑系の世界で、何が悪い特性と指定されるのか。農耕社会から産業社会になり、アトム化した個人は分業と協業のシステムにより競争社会で生活をする。スマホによりつながりすぎた現在、上っ面の同質性を強化されやすい。2016/03/03
funuu
28
二人の男は、もし、彼らがお互いを同じ民族に属していると認知する場合に、そしてその場合のみ、同じ民族に属する。換言するならば、民族は人間が作るのであって、民族とは人間の信念と忠誠心と連帯感とによって作り出された人工物なのである。(たとえば、ある領域の住人であるとか、ある言語を話す人々であるとかいった。)単なる範疇な分けらた人々は、もし彼らが、共有するメンバーシップの故にある相互的な権利と義務とを固く認識するならば、その時、民族となる。ある範疇の人々を民族へと変えていくのは、2017/11/23
かわうそ
27
産業化が作った社会の裂け目がナショナリズムがつけ入る余地を与えたのだ。つまり、産業化とは円滑なコミニュケーションの要求であり極めて流動的なのである。産業社会は極めて専門化が進んだのにも関わらずそれぞれに代替可能なのである。すなわち、基礎教育を統一する必要があるのでありそれは国家しかなし得ない。そして、国家は文化、教育を統一して産業社会を支えてきた。そして、メディアなどが言語の統一性の重要性などを喧伝し、ナショナリズムを芽生えさせる種を植えたわけだ。2022/09/21
非日常口
27
同志社の佐藤優氏講義で使用。翻訳微妙な章あり。1章で、民族を①文化を共有していると考える集団の場合と②自らの意志によって民族と認知する場合に分けて考えている。そして意志と文化ではあまりにカテゴリーとして大枠過ぎてしまうことを意識しつつ、耐エントロピー構造を6章で具体例とともに提示。国家が社会インフラと教育の役割や、人がアトム化した現在、その産業社会において耐エントロピーが引き起こす垂直的亀裂はコミュニケーションの是正では解決は難しい。気付かない内にツケは底辺に回され、ある時閾値を超えて吹き出すことになる。2015/06/06