感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
95
水上に描くトルコの伝統絵画「エブル」・マーブル模様の紙の職人アフメットじいさんの元で働くハリルは、イスタンブールでその紙の配達をしている。船で向こう岸のペラに着いて、たつきと一緒にバザールでお買い物に行った。バラの茎と数珠の紐、馬の尻尾は、フルチャという絵ふでになる。途中に挟まれるチューリップを描いたエブルのため息の出るような美しさ。著者末沢寧史はトルコに留学し、エブルの作家故フスン先生に習った。コロナ禍の中、日本とトルコの交流を絵本で描いた。トルコの別れの決まり文句の意味はまた会おうという意味だという。2022/04/03
とよぽん
59
しっとりとした良い絵本を読んだ。トルコのイスタンブルが情緒あふれる魅力的な街だったことが感じられる。後ろの見返しの「ハリルと旅するイスタンブル」という地図もいい雰囲気だ。ハリルとたつきのほのぼのとした交流、トルコの「エブル」というマーブル模様の紙やそれを作る道具、歴史あるバザールの迷路のような道・・・。文も、そして絵も極上の絵本である。表紙がまた味のある素敵な絵なのだ。発行所の(株)三輪舎のセンスが光る。2022/04/11
seacalf
52
100年前のイスタンブールの舞台にトルコの伝統的な絵画技法エブルを絡めたお話絵本。エブルの親方であるおじいちゃんの言いつけで主人公ハリルとお得意先の日本人の子たつきくんが連れ立って筆の材料を探しにバザールの奥深くまで行くあたりが楽しい。セピア色で描かれた街並みを眺めていると、一昔前の旅行で実際に足を運んだグランドバザールやエジプシャンバザールの雑踏や物珍しい店の数々が思い出されて懐かしい。大変凝った作りの絵本で、途中のページには実際にエブル画法で描かれたチューリップを見ることが出来るのが嬉しい驚き。2023/01/14
ぶんこ
49
トルコのイスタンブールで、伝統絵画の「エブル」の名人の祖父を助けてお使いをするハリル。お使い途中に、通学する友達に会うのですが、学校に行けているのかと心配になりました。お使い先で出会った日本人の少年たつき。父はエブルを日本に紹介する仕事をしている。市場にも行ったことのないたつきをハリルは案内します。ハリルの家に遊びに行ったたつきは、ハリルの父が行方不明と知り、折り鶴を教えて「きっと帰ってくる」と願いをこめる。エブルの作り方、道具類の紹介もあって、実物を見たくなりました。2022/05/20
よこたん
41
“エブルは製紙法とともに中国で生まれ、イスタンブルで発達した。いまは「マーブリング」という名で世界中のひとから愛されている。” あとがきを読んで、さらに胸が熱くなった。西と東の文化が交差し混じり合う地、イスタンブル。そこに暮らすエブル職人の孫ハリルと、日本人の商う店の息子との交流。生きていくためには働かなくてはならない。友達は毎日学校に行っているというのに。本の中ほどにはさまれた、流れるように美しいエブルに息を呑む。思いのこもったエブルの紙で折られる日本式の祈りの形に心震える。セピア色の素敵な絵本だった。2022/05/01