内容説明
日常という名の虚偽に人一倍敏感だった坂口安吾は常に自分の現実を物語に変容させた。そう、安吾のファルスは現実を一度完全に解体してナンセンス化し、再構成する知性の働きが秀逸なばかりでなく、不条理でありながら拒絶よりも許容する雅量が光っているのだ。急き立てられるように書き続け、陶酔と分析、あくまで解剖する視線を失わない孤独の深淵を描いた作品群に、耽溺したい!
著者等紹介
坂口安吾[サカグチアンゴ]
1906(明治39)年~1955(昭和30)年、小説家・批評家・随筆家。1930年、東洋大学文学部印度哲学倫理学科卒業。同人雑誌『言葉』を創刊。1931年発表の「風博士」が牧野信一に認められ、戦後、『堕落論』や『白痴』などで脚光を浴び、無頼派・新戯作派と呼ばれる。様々なジャンルの作品も精力的に発表する。人気作家として多作に励む中、1955年、「狂人遺書」を残し脳出血により急逝した。享年五〇歳
長山靖生[ナガヤマヤスオ]
評論家。1962年、茨城県生まれ。鶴見大学歯学部卒業。歯学博士。文芸評論から思想史、若者論、家族論など幅広く執筆。2010年『日本SF精神史 幕末・明治から戦後まで』(河出書房新社)で日本SF大賞、星雲賞を受賞。2019年『日本SF精神史“完全版”』で日本推理作家協会賞受賞。2020年『モダニズム・ミステリの時代』で第20回本格ミステリ大賞“評論・研究部門”受賞。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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