内容説明
20世紀文化史上、兇々しい閃光を放つアントナン・アルトー…精神の病と格闘しつつ、底知れぬ深淵へと向かう、その魂と肉体の航跡に、気鋭の精神科医が臨床の知を駆使して迫る。在ることの空虚と過剰、そして自由。
目次
第1章 アルトーという磁場―序にかえて
第2章 アントナン・アルトー小伝
第3章 病歴と精神分裂病の精神病理
第4章 精神分裂病者における〈裡なる制度〉と「存在の自由さ」
第5章 重さをひらく
第6章 アルトーという存在―ブラックホールの思考と肉体
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
またの名
6
年代順に掲げられたアルトーの写真が衝撃的に残念。トーラスの中心に空く無底のブラックホールへと危険な接近を試みた創造的な狂気が、精神科の診察室で苦痛を訴える人々の体験と並べて論じられることに驚きと戸惑いを隠せない読書時間。象徴化され得なかった現実界のモノ、個体的にノエマ化する以前のノエシス的潜在性、統一する神に対するカオスの神といった形で変奏される病跡学的な分析用語は、患者が固執する「普通」という規範とそこからの逸脱が形成するトポロジー構造を突き止めるために繰り出される。医学なのに詩的な戦慄させる病跡学。2014/05/13