内容説明
従来のアカデミズムには、古事記を「瑞穂の国」のあらすじにそって解釈してきた歴史がある。そこには本居宣長以来、古事記を稲作共同体とその国家の物語とみなすイデオロギーがあった。その結果、そうした読みではどうしても解釈できない情景がたくさん残されてきた。本書は旧来の読みに対して、古事記は「鉄の神々の物語」であるという視座を導入して、新たな読みを提示する。古事記は「火の神・鉄の神」が「日の神」にすり替えられた物語だという読みである。まったく新しい古事記解読の一ページを切り開く画期的試み!
目次
第1章 古事記のはじまり
第2章 伊耶那岐命と伊耶那美命の神話
第3章 天照大御神と須佐之男命
第4章 大国主神
第5章 天降り 忍穂耳命と迩々芸命
第6章 海神の国訪問
著者等紹介
村瀬学[ムラセマナブ]
1949年京都生まれ。同志社大学文学部卒業。現在、同志社女子大学生活科学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mustache
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古事記上巻を、鉄の神々の物語として読み解こうとする、これまで誰も試みたことのない、恐るべき豪腕の作品。鉄をもたらす火の神・鉄の神であったアマテラスが日の神・光の神にすり替えられる過程が詳細に語られる。このような「すり替え」は、火を生み出す原子力を、光を生み出す装置であるかのようにすり替えて宣伝することにより、原子力発電が戦後の日本に受容されてたこと重ね合わされ、かくして古事記の読解と現代日本の病巣が関連付けられる。荒唐無稽な古事記のエピソードが読み解かれる面白さをさらに吟味するために、再読、三読を要する。2015/08/07