内容説明
いまという時代に生きているぼくもまた、昔の人が知らない本を、読むことができるのだ。書き下ろし6編を中心にした最新エッセイ集。
目次
茶箱
消えていくこと
昭和の読書
芸術の人生
昭和の芭蕉
昭和の本
書きもの
名作集の往還
明治のダイヤモンド
大正の火花〔ほか〕
著者等紹介
荒川洋治[アラカワヨウジ]
1949年、福井県生まれ。現代詩作家。1972年早稲田大学第一文学部卒。詩集『水駅』(1975、書紀書林・第二六回H氏賞)『渡世』(1997、筑摩書房・第二八回高見順賞)『空中の茱萸』(1999、思潮社・第五一回読売文学賞)『荒川洋治全詩集』『心理』(2005、みすず書房・第一三回萩原朔太郎賞)、評論・エッセイ集『忘れられる過去』(2003、みすず書房・第二〇回講談社エッセイ賞)『文芸時評という感想』(2005、四月社・第五回小林秀雄賞)ほか(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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tamami
42
現代詩作家の荒川さんの本が、どういう経緯で書棚にあるのか知らない(そんな本が結構ある)。本書の大部分を占める昭和文学史的なエピソードでは、沢山の有名・無名な著者の本を知ることができ、新たな読書への意欲をかき立てられる。それにしても、文学(に限らないが)の底は深く広いことを思い知らされる。多くの文学全集の作家作品の紹介にはやや退屈な思いもするが、山之口貘の「土の上には床がある 床の上には畳がある 畳の上にあるのが座蒲団で…」から始まる「座蒲団」詩や魏の董遇のいう読書にとっての三餘の話等は楽しませてくれる。2021/05/19
メタボン
35
☆☆☆★ どれだけ文学作品を読んでいるのだ、荒川洋治は!と叫びたくなってしまうほど、文学全集に対する知識や熱い思いが感じられた。まだまだ知らない作家がいる。文学全集のうちの、個人集ではなく、名作集を読むことで新たな作家と出会うのも楽しいのだろうな。全集は物理的にも「重い」ので、私は文庫のアンソロジーを愛読したいと思っている。2018/10/31
Yusuke Oga
27
「素朴な文学主義者」というか、まったくてらわないところがいいなー、と読んでいて思った。いまの時代にはまっとうすぎるぐらいに感じる、本とのつながりについての文章をあつめたもの。ツァラの宣言文に対し、誰かがどこかで何か言って、それに誰かが新聞なんかで読んだりして火がついて、「がちゃがちゃ、うろうろ」させることが大切だ、と言っているのが印象的だった。そういう「わけのわからないもの」が自由に還流する空気の中でだれでもが面白いものに接続できた「昭和」という時代に思いを馳せつつ、さてこれからはどうしようかと考える。2014/10/27
midnightbluesky
2
著者が著名な詩人であることは知っているが、作品を読んだことはない。でもどういった本を読んでいるかで、その世界観に少し近づいた気がした。2012/02/19
フッセル
1
「詩の読者という立場でみると、詩の世界は、状況のない状態にある。動きがほとんどない。この二十年ほど、一時代を画する詩人も現れていない。詩の才能のない人の数が、とても豊富になったのである」「人は心に思いを持ち、ことばを真剣に求めるとき、平坦な散文のことばではなく個人的な感受性をうけいれる詩のことばを選ぶ。目の前に模範となるものがなくても、その人のことばをひとりであみだし、ひとりで動かしていくのだ。詩のことばは外からではなく内部からわきでるのだ。それは人がそなえる「基本の能力」のひとつである。」(P206)2023/03/12