魔術的リアリズム―二〇世紀のラテンアメリカ小説

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  • サイズ B6判/ページ数 234p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784891769185
  • NDC分類 960.2
  • Cコード C0098

内容説明

ボルヘス、ガルシア・マルケス、アジェンデ、バルガス・ジョサ…数々の作家を世界に送り出し、一世を風靡したラテンアメリカ小説には“魔術的リアリズム”という手法があった。その重要な諸作品を歴史的背景とともに辿りながら、物語に社会変革の希望を託した作家たちの手法を明らかにする。

目次

第1章 シュルレアリスムから魔術的リアリズムへ
第2章 魔術的リアリズムの原型
第3章 魔術的リアリズムの隆盛
第4章 魔術的リアリズムの新展開
第5章 闘う魔術的リアリズム
第6章 文学の商業化と魔術的リアリズムの大衆化

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

三柴ゆよし

38
これまで曖昧なまま受容してきた「魔術的リアリズム」について、クリアな視野を得ることができた。カルペンティエールやアストゥリアスが目指した「脅威的現実」の活写から、ルルフォ、マルケスによる「非日常的視点に基礎を置く共同体」の発見を経て、アジェンデに代表される「商業化」へ至る系譜が、時系列に沿ってまとめられている。またマルケス『族長の秋』を、圧制者が利用する「疑似魔術的リアリズム」と、敗者・周縁者の視点に依拠した「本来の魔術的リアリズム」の衝突として読み解いた作品論などは秀逸の一言で、非常に有益な評論だった。2012/10/22

長谷川透

37
魔術的リアリズムの本質を、非日常的な視点を基盤に一つの共同体を作り上げ、そこから現実世界を新たな目で捉えなおすこと、と断言しながらも、その亜流も商業娯楽主義の中で用いられる魔術的リアリズム<的>な文学作品も似て非なる超現実も、それらの相違を丁寧に解説してくれる。また魔術的リアリズム至上主義になっていない点にも好感が持てる。魔術的リアリズムの想起、隆盛、展開、成熟、流用までを時系列に沿って説明してくれているので、木村榮一氏『ラテンアメリカ十大小説』以上にラテンアメリカ文学のガイドブックとしてもお薦めである。2012/11/14

ミツ

28
曖昧なまま流布している「魔術的リアリズム」なる概念を、その変遷をたどりながら整理し指針を示すとともに、ラテンアメリカ、ひいては世界の中でその意義の位置付けを試みた名著。シュルレアリスムとの出会いに始まり、ルルフォやマルケスらによる完成を経てドノソを経由し商業化するまでを、西欧との関係や独裁者などラテンアメリカ諸国の実情を踏まえてスリリングで熱のこもった筆致で論じる。主要な役割を果たした作品の解説もなされており、ブックガイドとしても読める。特に『百年の孤独』『族長の秋』の解説だけでも一読の価値あり。佳作。2014/05/12

梟をめぐる読書

21
所謂「魔術的リアリズム」の歴史について、これだけ冷静に分析してみせた例も珍しい。著者はまず「魔術的リアリズム」的な作品の草分けとして『この世の王国』と『とうもろこしの人間たち』という二つの作品を取り上げ、前者は「黒人世界内部からの記述を試みながらも、最終的に語りの重心を西欧的知識体系においている」点において問題を孕んでいるが、後者は逆に「マヤ世界観への密着を究極まで押し進めた結果」「理解不能になっている」ことを指摘、そのジレンマを複雑な語りの構造によって見事に解決した作品として『ペドロ・パラモ』を挙げる。2012/10/22

そふぃあ

20
ラテンアメリカ文学の辿った道筋、マジックリアリズムの系譜が良くまとまった有益な内容だった。面白く読めた。だけど、ちょっと口が悪い。余計な一言が多い。こんなに色んな文学作品を酷評している本は珍しい。入門としてはおすすめしない。ラテンアメリカ文学の入門書として読んでしまうと、不要な先入観を抱きかねない。本書を読むなら、ある程度ラテンアメリカ文学を読んでからの方がいい。アジェンデの『精霊たちの家』はエンタメであり、ガルシア=マルケスの継承者ではないのも同意するが、"稚拙"というのは余計な一言。2022/11/09

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