内容説明
虎の門事件被告の難波大助は、その青春期の多感な時期にあって、「大逆事件」の公判記録記事を読むに到って大いに感銘を受け、社会主義(無政府主義)の思想を実行しようと考えたといわれている。虎の門事件は「古今未曽有の不祥事件」といわれたように、大胆なテロの未遂事件である。事件は、関東大震災後の一九二三(大正十二)年十二月二十七日に起こった。事件の舞台となった虎の門は、旧江戸城外門の東海道に向かって最初の見付門であって、白虎にちなんで「虎の門」と名づけられたという。事件の当時ではすでに官庁街である霞ヶ関への入り口として建物が密集していた。山口から上京して東京に滞在していた難波大助(事件当時二五歳)は、地図で検討した結果、この地で摂政の任にあった皇太子の到来を待っていた。一行が国会へ向かう道筋であったことは事前に確認されており、しかも犯行は事前に予告されていた。本巻には、虎の門事件に関する訴訟記録のうち、特別事件記録之主要調書(大正十二年十二月二十八日~大正十三年二月二十二日)を収録した。