出版社内容情報
エドマンド・バーク(1729-97)は、封建的階層制秩序の擁護と自由市場の擁護という一見相容れない立場の両立を唱える。文明社会が不可避的に生み出す悲惨な労働者の存在と、何としても文明社会の恩恵は必要だという固い信念との間で悩み抜いたバークの思想は、今日の格差社会を考えるにあたっても学ぶべき点は限りなく多い。
内容説明
保守主義の父から文明社会の隠された“構造”を学ぶ。エドマンド・バーク(1729‐97)は、封建的階層制秩序の擁護と自由市場の擁護という一見相容れない立場の両立を唱える。文明社会が不可避的に生み出す悲惨な労働者の存在と、何としても文明社会の恩恵は必要だという固い信念との間で悩み抜いたバークの思想は、今日の格差社会を考えるにあたっても学ぶべき点は限りなく多い。
目次
序章 バーク研究の論点
第1章 文明社会の危機―プライスとバーク
第2章 文明社会の政治的基礎―イギリス均衡国制
第3章 文明社会の精神的基礎―騎士道と宗教の精神
終章 文明社会を“保守”するために
補論1 バークのインド論―伝統文化主義の新地平
補論2 バークとハイエクの社会経済思想―伝統・市場・規範性
資料 バークのスミス宛書簡およびスミス『道徳感情論』書評
著者等紹介
小島秀信[コジマヒデノブ]
同志社大学商学部助教。博士(経済学・大阪市立大学)。社会経済学・社会哲学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ミスター
7
バークを勉強したい人は必読だと思う。網羅的ではなく『省察』の読解を中心に置き、哲学、政治、経済のレイヤーからバーク思想の分析を加えている。筆者によればバークは単なる復古主義者ではなく、歴史の進歩を目指すならば、フランス革命派が批判する封建的「騎士道精神」や宗教意識を擁護しなければならないというのがバークの大筋の論旨で、あくまで人間の知を信じる合理的啓蒙主義ではない人間の悪徳と情念、無知に目を向けた上で、かかる弱さを歴史や制度でフォローする保守的啓蒙主義と呼ぶべき立場がバーク思想であると説明されている。2020/09/21
ミスター
3
もう一度読み直して。やはりバークは悪い予想は当たったが、いい予想は外れている。バークは人々が豊かになれば政治に関心を持たなくなると考えたが、事態は逆であった。バークにとって文明社会を保護するものであった伝統を積極的に破壊する政治活動を行ったのは民衆の抑制であった。しかし伝統社会が壊れた時代だからこそ、この壊れかけの文明社会を救うためにバークは読む価値があるのではないか。2020/10/05