出版社内容情報
著者は後6世紀ビザンツ帝国の属州に生まれ、時の皇帝ユスティニアノス1世の名将ベリサリオスに仕えた、当代随一の教養人。正史とも言える主著『戦史』の裏面をなす本書は、自ら実見した皇帝と妃テオドラ、将軍と妻アントニナらの悪行を暴露したもの。虚実ない交ぜで史料としての扱いには慎重を要するが、読み物としては無類に面白い。生前は私的な配布に留まり、公刊されることがなかった。
内容説明
当代随一の歴史家が、時の皇帝とその妃、名将とその妻の悪行を修辞を尽くして暴露した、陰のビザンツ史。
著者等紹介
和田廣[ワダヒロシ]
筑波大学名誉教授。1940年東京都生まれ。1970年ケルン大学哲学部史学科(ローマ史、ビザンツ史専攻)卒業。哲学博士。ケルン大学哲学部史学科助手、浜松医科大学助教授、東洋英和女学院短期大学教授、筑波大学歴史・人類学系教授等を経て、2004年退官(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ようはん
20
著者は一時的にローマを回復した東ローマ皇帝ユスティニアヌスに仕え、ローマ奪回の立役者である名将ベリサリウスの幕僚を務めた人物で、両雄とその夫人の活躍を称賛した「戦史」を残している。しかし、生前に刊行されなかった本書は著者の本音?というか「戦史」とは完全に真逆の内容で上記の4人の乱行や悪政がこれでもかというぐらいにボロカスに書かれている。一応、著者の置かれていた立場故のバイアスもあり全てが真実でないようだが、特にユスティニアヌス帝に関しては悪魔だの偽善者だの変節漢だのとバレたら死刑確実の酷い言われよう。2022/01/08
roughfractus02
7
著者は東ローマ皇帝ユスティニアヌス、皇后テオドラ、ペルサリウス夫妻を主人公に『戦史』を英雄物語で、『秘史』を喜劇で書き上げ、栄華の中の崩壊の兆候を複眼的に書き記したか? 賛辞に満ちた『戦史』から一転、喜劇的な罵倒や非難が頻発する本書は、古代文化を担う階層を疲弊させる彼らの政策を引き金にローマ文化自体の崩壊が始まる予兆が記される。古代共和制を担い、後に衰退した元老院に近い著者が、専制君主制に転換した皇帝らに対し、ギリシャローマ文学の修辞を使い、200年前の専制君主ディオクレティアヌスを重ねているかに思えた。2022/07/05