内容説明
文字通り権力の象徴であり、産業化の中軸であった鉄道。強力な王権を維持しながら、列強の植民地となることなく、したたかに工業化・近代化を遂げたタイこそ、鉄道と近現代の関わりを知る最高の舞台である。自らタイの鉄道網を乗り尽くした研究者が、豊富な資料を駆使しながら描く鉄道の歴史と今後の展望。東南アジア紀行としても楽しい著書。
目次
第1章 黎明期の鉄道―一八八〇~一九一〇年代(鉄道導入前夜;鉄道建設の推進 ほか)
第2章 「政治鉄道」からの脱却―一九二〇~一九三〇年代(鉄道網の統一と拡張;国際鉄道網構想の出現 ほか)
第3章 戦争と復興―一九四〇~一九五〇年代(国際鉄道網の構築;戦争の傷跡 ほか)
第4章 鉄道の転換期―一九六〇~一九八〇年代(フレンドシップ・ハイウェーのインパクト;鉄道側の対応 ほか)
第5章 鉄道の復権―新たな役割を担って一九九〇年代~(在来線の状況;都市鉄道の登場 ほか)
著者等紹介
柿崎一郎[カキザキイチロウ]
横浜市立大学国際総合科学部准教授。1971年生まれ。1999年、東京外国語大学大学院地域文化研究科博士後期課程修了。横浜市立大学国際文化学部専任講師、同助教授を経て、2005年より現職。博士(学術)。『タイ経済と鉄道―1885~1935年』で、第17回大平正芳記念賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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コカブ
3
タイの鉄道の歴史を扱った本。タイ旅行の前に読んでイメージをつかんでみたが、現在のタイの鉄道は旅客輸送の主役ではないので、バンコクの都市交通以外に使う機会はなかった。タイでの最初の鉄道の開通は、1897年だった。英仏が様々な鉄道敷設計画を立ち上げる中、それを排除するために自国で鉄道を敷設することになる。まずアユタヤまで開通し、1900年に東北地方のコーラートまで開通した。チャオプラヤ川での遡行が可能な北部や、沿岸航路での代替が可能な南部とは違い、東北地方は鉄道の代替手段が陸路しかなかった。2019/04/27
司行方
0
本当にタイ鉄道の歴史がこれでもかというほど詰め込まれていて楽しい。鉄道について詳しくないが、外国との駆け引き、戦争、道路との競争など盛りだくさん。
Teo
0
タイの鉄道全史。これでタイの鉄道史は概ね網羅できるのではないだろうか。併せて東南アジアの鉄道史もタイに絡んで紹介。分量はかなりあるが、平易な文章で楽に読める。2010/05/27