内容説明
近代化とともに、法や権利の問題として急速に浮上したアジアにおける「外国人問題」。国境画定や植民地化による「国民」範疇の変化、経済移民による居留外国人の増大、戦争による「敵性外国人」への圧迫や難民など、19世紀以降の激動アジアの事例を詳細に検討し、「外国人」の形成と変容の様を、地域研究らしいリアリティで示す佳作。
目次
自画像と他者への視線―歴史学におけるトランス・ナショナリティ研究の提起
第1部 越境する民族のアイデンティティと「国民意識」(中国人移民の「脱中国人」化あるいは「臣民」化―スペイン領フィリピンにおける中国系メスティーソ興隆の背後;アラブ系住民による「民族アイデンティティ」の喚起―オランダ領東インドにおける「原住民」意識の創出;日本と台湾を結ぶ華人ネットワーク―戦前の日台経済関係における台湾人商人・華商・日本政府;在日台湾人アイデンティティの脱日本化―戦後神戸・大阪における華僑社会変容の諸契機;朝鮮人の移動をめぐる政治学―戦後米軍占領下の日本と南朝鮮)
第2部 不平等条約体制下における公共性とガバナンス(言説としての「不平等」条約説―明治時代における領事裁判権の歴史的前提の素描;法権と外交条約の相互関係―不平等条約体制下における日露間の領事裁判権問題と樺太千島交換条約の締結;台湾人は「日本人」か?―十九世紀末在シャム華人の日本公使館登録・国籍取得問題;第一次世界大戦後の中国におけるヨーロッパ人の地位―中華民国外交部档案からみる条約国との法的差異;「知的所有権」をめぐる在華外国企業と中国企業間の紛争―外国側より見た中国商標法(一九二三年)の意義)
第3部 アジアにおけるもうひとつのエスノグラフィ(ある在外日本人コミュニティの光と影―戦前の香港における日本人社会のサーベイ;拘留される「外国人」の待遇と心理状態―日本占領時期の香港スタンレー強制収容所;日米の資料にみられる戦時下の「外国人」の処遇―日本占領下の上海敵国人集団生活所;エスニック・グループのローカル・ナレッジによる処世術―上海・香港におけるアシュケナジムとセファルディムの比較;民族の独立とファシズムへの傾斜―東アジアにおけるテュルク・タタール移民コミュニティ(講演録)
回想録:一九四五年以降の在ハルビンロシア人の命運)
著者等紹介
貴志俊彦[キシトシヒコ]
京都大学地域研究統合情報センター教授。広島大学大学院文学研究科博士課程後期単位取得退学。研究分野:東アジア地域研究、日中関係史、地域情報学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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