内容説明
本書は、心身問題の観点からプラトンの哲学を再検討し、物心二元論の祖としてプラトンを位置づけるきわめて強固な思想史的伝統の誤解をただし、プラトン哲学の反二元論的とでもいうべき世界像の意義を明確にする。つまり、身体・社会・自然世界をつらぬいて、プシューケー(魂、生命、心)の働きを有機的に展開するプラトンの思想を考察することによって、今日のわれわれの知のモデルとして、プラトン哲学の有効性と可能性を提示する。
目次
心身問題前哨―プラトン『パイドン』における生と知の原理
第1部 魂と身体の共同性(魂と国家―プラトン『国家』における人間と国家のアナロジー再考;性・身体・国家―プラトン『国家』と女性;身体の解放と知の解放―ニーチェ、フェミニズム、プラトンのディオニュソス)
第2部 魂・イデア・場(物体主義と形相主義への批判―プラトン『ソピステス』における知と実在のパラドクス;物、空間、場―プラトン『ティマイオス』における「場」の理論;古代アトミズムの心身論との比較―エピクロスとルクレティウスの生命論とプラトン ほか)
第3部 魂のコスモロジー(コスモスの回復―プラトン『クリティアス』における自然環境荒廃の原因;魂の配慮と身体の配慮―プルタルコス『健康のしるべ』における医学思想とプラトン;身体の言葉と魂の言葉―プラトン『国家』における三段階模倣説と線分の比喩 ほか)
反二元論的世界像の探求
著者等紹介
瀬口昌久[セグチマサヒサ]
名古屋工業大学助教授。1959年兵庫県生まれ。1991年京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。1996年名古屋工業大学講師を経て現職。2000年京都大学文学博士
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