内容説明
「ラオ語を使え、ここはラオ人の村だ。『シャム語』はいらん」。筆者を叱りつけた東北タイの1老人は、しかし、ラオスの人々からは、「イーサン(東北タイ人)に過ぎない」と冷ややかな眼差しを投げかけられる―では、いったい、「ラオ人社会」とは何か?タイ・ラオス二国に跨り、17年に及ぶフィールド調査に基づいた詳細な民族誌から、地域に根ざす精霊祭祀と上座仏教の実践が、国家編制や社会変化の過程の中でいかに生成・分化し、変容したかを明らかにする。東南アジア社会に通底する地域のダイナミズムに迫る意欲作。
目次
序 本書の課題と目的
第1章 東南アジアの上座仏教徒社会研究と課題
第2章 「ラオ」人社会はどこにあるか
第3章 東北タイにおけるラオ人集落の形成過程と宗教構成
第4章 村落宗教の構造と変容
第5章 東北タイにおける仏教とモータム
第6章 村落宗教の変節と「森の寺」
終章 ラオ人社会の現在と宗教実践の行方