内容説明
アテナイ民主政激動の時代、活力ある描写で社会と人間を映し出す法廷弁論・草稿34篇。
目次
エラトステネス殺害に関する弁明
コリントス戦争の援軍として斃れた戦士への葬礼弁論
シモンに答える弁明
計画的傷害事件について―被告・原告不詳
カリアスの聖財横領事件に関する弁明
アンドキデスの涜神行為告発
アレイオス・パゴス法廷弁論―聖オリーヴ樹の木株についての弁明
講仲間内部の中傷に対する非難
兵役被登録者のために
テオムネストス告訴〔ほか〕
著者等紹介
細井敦子[ホソイアツコ]
成蹊大学文学部教授。文学修士、西洋古典学専攻
桜井万里子[サクライマリコ]
東京大学大学院人文社会系研究科教授。文学博士、西洋史学専攻
安部素子[アベモトコ]
東京大学、東京外国語大学、東京女子大学非常勤講師。文学修士、西洋古典学専攻
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感想・レビュー
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roughfractus02
3
著者(BC445頃-BC380頃)はペロポネソス戦争(BC431-BC404)を生き、戦後アテナイの寡頭制に対する民主制擁護の論陣を張った弁論作者(λογογράφος)である。三十人政治期に財産を没収され追放された著者は、民主側に資金を供しつつ演説草稿を書いた。著者の文体で目立つのは反実仮想の多用である。法廷での「Aだったなら、Bではなかった」という論理の使用は、裁判官たちにありうべき過去を与えつつ、現在の惨状と比較させ、論敵にその責任を負わせる言葉の力となる。その背景には激動のアテナイの惨状が重なる。2019/08/09