内容説明
一軍人として生涯を生きた貴重な経験を背景に、軍事、政治、人物を縦横に論じる。本邦初訳。
目次
ヒエロン―または僭主的な人
アゲシラオス
ラケダイモン人の国制
政府の財源
騎兵隊長について
馬術について
狩猟について
アテナイ人の国制
スコリア(古注)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
8
傭兵の経験を書くことは、ある範囲に読者を限定し、著者と読者の属する国家、政府、軍隊体制を他の体制と対照し、戦争や軍についての様々な細部に熟達した知見を披歴する必要がある。なぜなら、本書に収録された9つの小論は、理論的な抽象性を排し、体験を通した教説から成るからだ。確かに著者の嗜好が強いというこれら教説は、軍人から見た政治体制の理想を軍体制(寡頭制、君主制)に重ね、その教説も自らの配下の兵士に向けられるかに思える。が、軍事、馬術、狩猟から財政、政治体制に関するこれら知見は、危機に備える直観の養い方も教える。2022/06/27
ハルバル
2
クセノポンの特徴(スパルタ讚美、優れた軍人、名著述家)がよく出ている小品集。自分が部下として仕えたスパルタ王への讚美文「アゲシラオス」といい「アナバシス」の小キュロスといい、師ソクラテスといい、クセノポンは仕えた人間にすぐ心酔してしまう性格の様子。ある意味では上司に恵まれていたのか?「政府の財源」は当時のアテナイ経済についての貴重な史料でもあり楽しめた。「アテナイ人の国制」は偽書だが伝クセノポンとして伝わるからには、クセノポンが寡頭制を唱えていて一脈通じるものがあったからかも2015/05/10