目次
第1部 鴻池幸武による「文楽評」の成立―背景と特徴分析(鴻池幸武と「文楽」;鴻池幸武による「文楽評」の成立過程;鴻池幸武による「文楽評」の特異性;鴻池幸武文楽関係略年表;鴻池幸武「文楽評」一覧)
第2部 鴻池幸武文楽批評集(昭和一一年;昭和一四年;昭和一五年;昭和一六年;昭和一七年;昭和一八年)
著者等紹介
多田英俊[タダヒデトシ]
1957年4月15日生まれ。1980年筑波大学第一学群人文学類卒業。2010年大阪大学大学院文学研究科文化表現論専攻博士後期課程修了。博士(文学)。京都府立高等学校教諭・指導教諭・司書教諭、京都教育大学非常勤講師、大谷大学非常勤講師、京都造形芸術大学非常勤講師。人形浄瑠璃文楽に関するWebページ「音曲の司」主宰(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
98
伝統芸能の中で、近年の芸の劣化が最も著しいのが文楽だと思う。芸能は、演者と良質の鑑賞者との厳しい切磋琢磨があって磨かれる。昨今の手放しの礼賛やおざなりの新聞評が、文楽の凋落の共犯者である。本書は、稀代の研究者である鴻池幸武さんの昭和10年代の文楽批評。その態度は厳しいの一言に尽きるが、具体的な指摘を伴い、極めて説得力がある。また貶すばかりでなく、古靭太夫の神髄を見抜き、その解釈や研鑽を絶賛する文章には愛情が溢れている。「よかった」「凄かった」などの陳腐な言葉でなく、きちんと芸を語れるようになりたいと思う。2023/12/02
がんちゃん
2
武智鉄二が歌舞伎古典を研究する上での三大名著の一つに鴻池幸武の『道八芸談』をあげていたが、その鴻池幸武氏の文楽批評集が出版されていることを知り、さっそく読んでみる。うむ、まさに忖度なし! 良いものは良い、悪いものは悪いと具体的かつ詳細に指摘していく。そして、その根底にあるのは、文楽に対する危機感と愛そのものなんだよね。そもそも批評って恐い。その人の知識とか感性、品性までもが暴露されてしまうから。そう思うと、現在の批評家と名乗る人たちに鴻池氏のような覚悟があるのか。芸術を育てるのは批評家でもあるんだよね。2023/12/26