目次
織田作之助とは誰か
1 代表作を読む―形式の工夫(「系譜小説」と語りの方法―『夫婦善哉』;敗戦大阪の風景と戦中戦後の連続性―『世相』;方法としての坂田三吉―「可能性の文学」)
2 作之助の“器用仕事”―先行作品の換骨奪胎(『近代大阪』のサンプリング―「馬地獄」;笑い話のリミックス―『人情噺』『俄法師』『異郷』;オマージュとしての一人称―『天衣無縫』『勧善懲悪』;大阪・脱線・嘘―『アド・バルーン』)
3 新聞小説での試み―エンタメ×実験(銃後の大阪―「大阪新聞」と『清楚』;戦時下の新聞小説への諷刺―「産業経済新聞」と『十五夜物語』;記事・広告との化学反応/新聞小説の小説―「京都日日新聞」と『それでも私は行く』;復員兵と闇市―「大阪日日新聞」と『夜光虫』;先鋭化する実験―「読売新聞」と『土曜夫人』)
作之助没後の世界で―一九四七年前後の“小説の面白さ”
著者等紹介
斎藤理生[サイトウマサオ]
1975年生。大阪大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)(大阪大学、2004年)。群馬大学教育学部講師、同准教授を経て、2014年4月より大阪大学大学院文学研究科准教授。専攻は日本近現代文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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里愛乍
35
本書は小説家・織田作之助についての半生でも評論でもなく、まさに文学の研究文書といった感じです。作品を引用し、当時の作之助の現状や言質などから解説していく。またこの引用部分が面白く、続きが読みたくなって仕方ない。特に新聞連載中の小説が、新聞のリアル事件とシンクロされるように読めたという構成は驚きです(勿論その仕掛けは単行本読みでは分からない。連載をリアタイで読んだ人だけが楽しめるもの)どうすれば面白い小説になるのか、面白く読めるのか、日々実験を重ねて書き飛ばしていた男。『夜光虫』は是非読んでみたい。2021/01/10
ゆづき
1
自分で作品を読む際には分からないような、織田作之助作品の研究書として入りやすい一冊でした。後書きで筆者がちくまの文学全集を買った本屋さんは、私も馴染み深いところで驚きました。2022/10/30