目次
第1章 戊辰戦争と音楽―山国隊軍楽の誕生
第2章 口伝のマーチ―演奏から過去を読み解く
第3章 明治期における旧藩顕彰と士族―天童藩と上山藩の鼓笛隊
第4章 人吉藩鼓笛隊の近代史―記憶と記録の「正しさ」をめぐって
第5章 幕末鼓笛隊の伝播と変容
第6章 五線譜の“維新マーチ”
著者等紹介
奥中康人[オクナカヤスト]
1968年東京生まれ、奈良育ち。同志社大学法学部卒業。大阪大学大学院文学研究科博士課程後期を単位取得退学後、日本学術振興会特別研究員、京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター特別研究員などを経て、2011年4月より静岡文化芸術大学文化政策学部准教授。博士(文学)。著書『国家と音楽伊澤修二がめざした日本近代』(春秋社2008)で第30回サントリー学芸賞を受賞(芸術・文学部門)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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きさらぎ
6
京都市右京区の山国地区では、「山国隊軍楽保存会」によって、現在まで祭礼で鼓笛隊による軍楽の演奏が行われている。それは篠笛とスネアドラムを有する和洋折衷の楽隊である…というところから筆を起こし、幕末期に鳥取藩に属する形で皇軍に加わる「山国隊」の成り立ち、彼らが練兵の際にドラムによって集団軍事行動の訓練を受けたであろうことや東征の姿へと話を進める。更に各地に残る軍楽隊のメロディとリズム、奏法や構成などからその伝播と変容を探る。譜面による伝承と口伝えによる伝承の比較や考察など、歴史面からも音楽面からも興味深い。2016/11/07
ひろただでござる
1
ドラムの「鼓譜」というものを初めて見た。以前武満徹さんが象形文字を見て「楽譜かもしれない・・・」って言ってたのを思い出した。2013/04/23
東隆斎洒落
1
軍楽を初めて垣間見る。軍楽は、大音響を鳴らして味方の士気を鼓舞し、相手を威圧する心理的側面のほか、組織としての統制を取るための行進曲(マーチ)や、砲撃・突撃の合図としての実践的具体的側面を備える。 全国各地の祭礼・お祭りのお囃子は、幕末の欧米列強の軍事訓練技術とともに取り入れた軍楽・軍歌が、地域社会に溶け込んでいった名残りとして紹介されており、西欧・戦争・日常生活の密接な関連に気付かされる。 このグローバルからローカル浸透の中、どの地域の行進曲も「シ・ラ・ソ・ラ」のリズムが多いというのも、興味深い。2013/03/02