内容説明
ベストセラー作家、漱石は一体いくら稼いだのか?漱石の文学活動を経済的な視点から捉え直すとともに、死後に生じた経済効果、文化資産としての動向を明らかにする。
目次
序章 “経済人”としての小説家
第1章 漱石の収支計算書
第2章 文化人としての「金持」
第3章 表象としての「金持」
第4章 漱石は市場原理を越えられたのか?
第5章 夏目家、「印税成金」となる
第6章 夏目鏡子の収支計算書
第7章 夏目家と岩波書店
著者等紹介
山本芳明[ヤマモトヨシアキ]
1955年、千葉県生まれ。1986年、東京大学大学院博士課程人文科学研究科単位取得退学。学習院大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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NAO
72
自分は貧乏だと言い続けていた漱石が、実はかなりの金持ちだったという考証。子だくさんで暮らしはそれほど楽ではなかったとはいっても、一方で、好きなだけ洋書を買えたということは、実は彼が貧乏ではなかったという証明でもある。正宗白鳥に「あなたの言う貧乏と私たちの貧乏はあまりにも度合いが違う」と反発されても、それこそ「坊ちゃん」なみの頑固さで正宗白鳥の言葉を頑として認めようとしなかったという漱石は、フェアではないなあと思う。投資家をさんざんを揶揄していた漱石が実は株で資産を増やしていたとは、ちょっと驚きだった。2018/09/21
Willie the Wildcat
66
市場原理下の文化活動。原理は理解していたと推察されるが、”御大名”故に現実を顧みることなく理想を追求。『伊達家入札会』と『学習院輔仁会の講演』の件が象徴的。文化への評価と、人の徳義。印税率の高低ではなく、先見的思考がポイントではなかろうか。所得上位2%・・・、金持嫌悪という哲学との矛盾?(美化するつもりもないが)そもそもその認識の無さと、作品群の作り出した氏のイメージが、周囲の雑音ともならなかった要因かと考察。一方、対照的な死後の夏目家顛末は既知。但し、夏目家と漱石氏は別物。正直この件に関して感想はない。2018/11/07
tom
17
漱石さん、お金持ちだったのだ。あれだけ本を出して、何種類も全集が出版されるのだから、お金がうなるほど入って来るのは当然。でも、漱石さん、自分は金持ちではないと、いつもおっしゃり則天去私をうんちく。不思議な人です。それから、漱石が生きているころから戦争が始まるころまでは、漱石の書くものは、坊ちゃん、猫の延長線上にある「低俳趣味」(たぶん、面白おかしいくらいの意味)と評価されていた。だから売れた。それがいつの間にか、高級文学、人生小説になってしまった。これにはなるほどと、私としては、大いに納得したのです。2019/02/01
パトラッシュ
5
漱石と家族のカネ絡みの人間喜劇が面白かった。特に漱石の死後、全集が売れて大金の入った家族が就職もせず「高等遊民」的な贅沢な生活を送ったあげく詐欺にあって財産を失い必死に金策する姿は漱石の小説よりよほど面白い。また、漱石が作家として高収入を得るようになりながら必死に隠す姿は、プライドを守るのに汲々とする小市民的な憐れっぽさすら感じる。大作家といえど所詮は人であり、その家族に至ってはたまたま文豪を夫に、父に持ってしまっただけなのに弟子たちを家来のように扱って大失敗するくだりがドラマ化されたら評判になるのでは。2019/08/31
suchmo
3
漱石さん、資金力のある投資家だったようで。 お金と上手く使えれば良かったですね。。。鏡子さん。2020/04/27