内容説明
フィクションとは、ひとが想像し思い描く非実在的な世界であり、また一定の水準をもつ言語行為ないしその所産である。これらは存在論、認識論、分析哲学において論じられるが、この主題を哲学史的に検証しようとする人文研究はかつてなかった。本書は、可能世界論を引き継ぐ近代ドイツ哲学者A・G・バウムガルテンが、詩学的虚構論と複数世界論とが交叉する結節点になると考える立場から構成した、フィクション哲学の歴史研究である。5部構成全12章にコラム4本を添える。
目次
第1部 詩学的虚構論の系譜(古代弁論術の伝統とフィクションの起源;古代哲学における「観念的構想」の存在論的位置―ストア派とプロティノスにおいて ほか)
第2部 複数世界論の系譜(複数世界と虚構空間―可能世界、不可能世界、実世界の交錯;“創造されなかった世界”の論理―ライプニッツの可能世界論の前史として)
第3部 詩学的虚構論と複数世界論の交叉(バウルガルテンにおける認識能力論の再検討―認識と自由の問題に関する一考察;神と詩人の世界創造―J・P・ウーツの教訓詩「弁神論」における神学的可能世界論と天文学複数世界論の交錯)
第4部 詩学的虚構論と複数世界論の交叉の行方(美的仮象論の成立過程―カントからシラーへ;複数世界の論理的構成―エミル・ラスクのカテゴリー論とカントの超越論論理 ほか)
第5部 虚構世界論の現代的展開(「この世界への信仰」を騙る「仮構」―ドゥルーズ哲学における非‐可能世界的な虚構の問題;虚構内言明のパズル―フレーゲ的対象概念から)
著者等紹介
樋笠勝士[ヒカサカツシ]
1954年生。岡山県立大学特任教授。古代中世哲学、美学芸術学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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